明るい部屋の謎
   写真と無意識

著者: セルジュ・ティスロン
訳者:青山 勝

価格:2000円
サイズ
 四六判上製 240ページ 刊行日 01/08 
ISBN4-409-03064-7 (専門・教養/美術・現代思想)

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目次
写真を撮る幸福 日本語版序文

序論 一千億回の「カシャッ」

「見る、観察する、考える」―― 象徴と象徴化/写真によって飼い慣らされた奇形=怪物/象徴的作用としての写真/「暗箱』への閉込め/完了した消化、完了しない消化

写真のさまざまな想像世界――世界の「定着」と「消化」のあいだにある映像/基底にある「それは−かって−あった」/刻印と痕跡/ 生きた時間の傷口/切断と捕獲/開放と連結/光と変容

喪、そして映像のうちに再び見出される対象――喪の拒否そして・あるいは受容/魔術的な征服/神秘の無限生産/ヨゼフ・スデク/表象への道筋/眼差しから映像へ

眼差しと歪んだ鏡――想像的なセルフポートレイト/眼差しの鏡/不安を呼び覚ます世界の映像/不安を呼び覚ます他者の映像/リチャード・アヴェドン―他者に傾ける期待の映像/不躾な眼差し

写真――世界の膜(エクラン)、世界の包皮――旅行者によって支えられるピサの斜塔/情動と感覚への衝動/『モレルの発明』/共同体的な想像世界/ 帰属の演出/内密な空間と公的な空間

記憶――映像の裏切り――写真、さまざまな記憶/恥と罪責間/映像の裏切り/写真と個人的記憶/写真と集合的記憶/「私が見ていることが分からないの?」

結論――ロラン・バルトと三つのすれ違い/写真―心的生活のメタフォー

   訳者あとがき/註/参考文献表/図版一覧/事項索引/人名索引


著者、訳者
内容紹介

著者:セルジュ・ティスロン
1948年生。精神科医、精神分析家。1975年リオン第1大学医学部で博士号を取得。1984年パリ第10大学で心理学の博士号を取得。現在は、さまざまな機関で臨床に携わりつつ、パリ第7大学等で教鞭も取っている。『精神分析家を訪れるタンタン』(1985年)で一躍著名となり、以来、「映像」と「家族の秘密」をテーマとする多くの著書を発表し続けている。その後の主要な著書として、『マンガの精神分析』(1987)、『恥』(1992)〔大谷尚文/島津 孝仁訳、法政大学出版局、2001〕『映像の精神分析』(1995)、『映像のなかの幸福』(1996)、本書『明るい部屋の謎』(1996)、『私たちの家族の秘密』(1999)等、近著として『いかにして精神はものに宿る か』(1999)、『今日の小さな神話』(2000)、『影響される子どもたち』(2001)等。精神科医クレランボーがモロッコで撮影した膨大な写真の修復とポンピドゥ・センターでの展覧会(1990)に携わったほか、ベルナール・プロシュ、カトリーヌ・ヌーリ、クロード・ノリ等、現代写真家との共同作業をも行っている。また、1975年にマンガによる医学博士論文を提出して以来、マンガ家としての活動をも行っている。『汚れ た耳(1995)』等。

訳者:青山 勝 あおやま まさる
1976年生。1998年京都大学大学院博士課程(美学美術史学専攻)単位取得退学。パリ第3大学映画学科に留学(1993‐1995)。現在は甲南大学大学院 学術フロンティア推進事業博士研究員。映像学。論文に、「失敗した写真――ゲルハルト・リヒターの場合」(甲南大学『心の危機と臨床の知』第1号、2000)等。訳書に、M・ティヴォー『不実なる鏡』(共訳、人文書院、1999)、J・A・ウォーカ−+S・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門』(共訳、晃洋書房、2001)、G・モラ『写真のキーワード』(監訳、昭和堂、2001)等。


「<活動>」としての写真とは、まずもって世界で毎年販売される25億本のロール・フィルムのことである。いいかえれば、シャッター・ボタンを押す750億回の動作のことである〔……〕」――「写真を撮る」という行為を突き動かしているものとは一体何なのか。750億回の「カシャッ」によってわたしたちは、世界や他者との関係、そして自己自身との関係をどのように変貌させることになるのか、写真行為の謎に 鋭く迫る好著。


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