書名:
必要なる天使

著者:マッシモ・カッチャーリ
訳者:
柱本元彦        岡田温司解説

価格:2800円
サイズ:
四六判上製 220ージ 刊行日2002年3月 
ISBN4-409-03067-1 (専門/哲学・思想)

                                                 内容紹介欄へ

目次

トピアの日々から/天使と悪魔(ダイモン)/表出の問題/横道帯十二宮/アポカタスタシス(帰還)/魂の鳥
附 『天使』への補遺(1991):天使の身体/神秘主義の機会原因論/権天使(グァリエントの絵)/翼の誕生/樹木/天の身体/臆病な天使/イアルダパオース/英雄的天使/ソクラテスの神について/空の鳥を見るがよい(『マタイによる福音書』六章二六節)/恐るべき夜明け/永遠の持続/母/愛人/再びアポカタスタシスについて/天使の言葉

原注/訳者あとがき
カッチャーリとモダニズムの天使たち 解説にかえて(岡田温司)
索引


著者・内容紹介

著者:マッシモ・カッチャーリ
1944年ヴェネツィア生れ。パドヴァ大学卒業。現在、ヴェネツィア大学美学正教授。ジンメル、ハルトマン、ロース、ルカーチ、ホフマンシュタールなどの著作集のイタリア語版監修者。反弁証法的思考と否定哲学の研究から出発し、ドイツ観念論批判、20世紀初頭の中欧文化の評価、神学的伝統の現代的再評価、形而上学伝統と現代哲学の接合、歴史・政治、都市論などとその仕事は幅広い。
著書:『オイコス』(1975)、『クライシス』(1976)、『石庭から』(1980)、『法のイコン』(1985)、本書『必要なる天使』(1986)、『根源について』(1990)、『ヨーロッパの地理哲学』(1994)、『群島』(1997)、『踊る神』(2000)など。また政治の世界での活躍も目覚しく、共産党議員(1976−83)、ヴェネツィア市長(1993‐2000)を歴任後、現在ヴェネト州議会参次をつとめる。

訳者:柱本元彦 はしらもと もとひこ
1961年生れ。京都大学大学院博士後期課程修了。現在、ナポリ東洋大学講師。
訳書:フェッリーニ『魂のジュリエッタ』(青土社)、ランドルフィ『カフカの父親』(共訳、国書刊行会)、ロンギ『イタリア絵画史』(共訳、筑摩書房)など。


書名の天使は、近代性をめぐるテーマにおいて重要な役割を果している、ベンヤミンの「新しい天使」のこと。未来に背を向けるベンヤミンの天使は、歴史の救済あるいは解放といったメシア主義的テーマを体現する「歴史の天使」である。それはヴァールブルクの「ムネモシュネ=記憶の女神」、つまり、ブルクハルトの古代とニーチェの古代という両極性を揺れ動く西洋文化の記憶のイメージにも通じている。
 直線的なクロノロジカルな歴史(終末論)ではなく、つねに「動いており、作用している時間」、対面・収縮する歴史(メシア主義)の可能性を開く媒体としての天使。このベンヤミン的な近代の天使の鏡に、壮大な神学的・哲学的天使論の系譜を写し直してみること、これが本書の狙いである。天使を哲学的主題に徹底させることで、発展の論理たるヘーゲル的弁証法を乗り越える。ここから歴史主義批判の可能性が開かれる。ジョルジュ・アガンベンとの親近性を云われる所以である。クレーの「天使」のデッサンを挿む。これまで、鵜飼哲訳『批評空間』連載論文があるのみ。


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