書名:中味のない人間 著者:ジョルジョ・アガンベン 価格:2400円 |
目次 |
このうえなく不気味なもの/フレンホーフェルとその分身/趣味人と分裂した弁証法/驚異の部屋/「詩についての判断は詩よりも価値がある」/自己を無にする無/剥奪は顔貌(かんばせ)のごとく/ポイエーシスとプラクシス/芸術作品の根源的構造/メランコリーの天使
原注/訳注 |
著者・内容紹介 |
著者 Giorgio Agambem ジョルジョ・アガンペン
1942年生。パリ国際哲学学院などを経て,現在ヴエローナ大学教授。哲学・美学。『スタンツェ』(1977)、『到来する共同体』(1990)、『ホモ・サケル』(1995)、『人権の彼方に』(1996)、『アウシュヴイッツの残りのもの』(1998)、『ポテンシャリティーズ』(1999)、『残りのとき』(2000)、『開かれ」(2002)など。
訳者
岡田温司 おかだ・あつし
1954年生。京都大学総合人間学部教授。西洋美術史。
『もうひとつのルネサンス』、『ルネサンスの美人論』、『カラヴァッジョ鑑』(編著)(以上人文書院)、『ミメーシスを超えて』(勁草書房)・ロンギ『芸術論叢』全2巻(監訳,中央公論美術出版)、アガンペン『スタンツェ』、ペルニオーラ『エニグマ』(共訳)(以上ありな書房)など。
岡部宗吉 おかべ・そうきち
1976年生。京都大学大学院惇士課程在藷。音楽史。 『カラヴァッジョ鑑』(共著,人文書院)など。
多賀健太郎 たが・けんたろう
1974年生。大阪大学大学院博士課程在簿。哲学。フイレンツオーラ『女性の美しさについて」(共編訳,ありな書房)など。
鬼才アガンベンの幻の処女作
昨年暮に初来日を果たし、その講演がNHKでも放映された注目のイタリア現代思想家アガンベン。すでに『アウシュヴィッツの残りもの』(月曜社)、『スタンツェ』(ありな書房)、『人権の彼方に』(以文社)などの邦訳書があるが、その代表作『ホモ・サケル』や『到来する共同体』などの翻訳書が相次いで刊行されるという。来日の折には、その独自の生政治学――もちろん、主権の危機と生政治とが過去二世紀のあいだにリンクしてきたというフーコーのテーゼを踏まえたうえで――の立場から、内戦をはじめとする現代世界情勢に対する鋭い分析をわれわれの前に披露してくれた。かくいうほどに、アガンベンの名前はどちらかというと、政治哲学に関わる発言において広く評価され、この十年ほどは生政治あるいは生権力への方向性を強めているが、その出発点となったのはほかでもない、ベンヤミンの直系ともいうべき、美学ないしは詩学をめぐる理論的かつ歴史的な考察である。ムージルの『特性のない男』をもじったタイトルをもつ本書はその成果を充填したもの。「処女作にはその作家のすべてが詰まっている」との言葉どおり、いまにまで続くアガンベンの問題意識のすべてがこの一冊にある。アガンベンの総体を論じる詳細解説を付す。