書名
:<複数文化>のために
    
―ポストコロニアリズムとクレオール性の現在―
 

著者:複数文化研究会編 網野善彦/鵜飼哲他

サイズ:四六判並製 320ページ 本体価格2600
     ISBN4-409-04041‐3 (専門/カルチュラル・スタディーズ)

《目次》
 はじめに―<複数文化>への誘い
 <海>から歴史を読みなおす―カリブ海・日本海・地中海(解説・木下 誠) G・アンチオープ/網野善彦/海老坂 武
      
T  ポストコロニアリズムの功罪(解説・崎山政毅)
       ポストコロニアリズム―三つの問い  鵜飼 哲
       文化の多様性の解釈と表現をコントロールするものは誰か?北原 恵
       中国現代文化論とポストコロニアリズム言説 坂元ひろ子
       KTVの形成と消費―多国籍文化装置としてのカラオケ・テクノロジー 陳 光興
       赤い大地と夢の痕跡  冨山一郎
      
U  クレオール性の構え(解説・木下 誠)
       「クレオール性礼讃」を心理批評の面から見渡すと G・アンチオープ
       アンティルのアイデンティティと<クレオール性>  J・ダオメ
       クレオールとジェンダー 石塚道子
       女たちの言葉―フランス語圏アンティルの女性作家たち M・コンデ
       ネグリチュードとクレオール、そして複数性  砂野幸稔
       父親殺しの連鎖を断ち切るために 西 成彦
      
V  文化翻訳のポリティクス(解説・崎山政毅)
      
複数文化をめぐる言説の歴史化にむけて 鈴木慎一郎
       木々の音節で私の名前を書くための語
       あるいはブラスウェイトにおける言語の問題設定  D・オーレリア
       「人権」の解体と国民の記憶―エリック・ウィリアムズを中心に 浜 邦彦
       ネイティヴィズムの詩学―二つの「テンペスト」と「アメリカ」 本橋哲也
       「日本人」とクレオール 細見和之
      コラムエッセィ ふくすうの声・ふくすうの眼 (コリン・コバヤシ)
      複数性と横断性 (杉原昌昭)
      おわりに―<複数文化>の新たな船出にむけて
      編集後記

《内容》
いかなるかたちであれ、均質な一体性をもった文化などというものは、ありえない。私たちが日々接しているのは、揺らぎや騒音をはらんだまま、どこまでも<複数>のものとして存在する<文化>なのである。こうした文化の複数的なありようを、ここではさしあたり<複数文化>という表現で呼ぶことにしよう。
 <複数文化>とは、文化を固定的な実態として捉えようとするあらゆる試みに抗しながら、文化の複数性を徹底的に考え抜こうという、私たちのまなざしの質そのものを指し示す言葉でもあるのだ。(略)<複数文化>へと目を向けるということは、とりもなおさず、私たち自身が文化を流動化させ複数化させる主体となる、ということでもあるのだ。
 このような<複数文化>へのまなざしを引き受けたとき、単一文化の神話が描き出してきたものとはまったく異なる風景が、私たちの目の前に立ち現れてくれるだろう。そうした風景のいくつかをさまざまな側面から提示し、文化の地図を書き変えることを目指して編まれたのか、本書である。ここには、<複数文化>という問いの可能性ができるかぎり多様な方向に開かれるよう、さまざまな切り口の論考が収められている。<複数文化>とは何かという問いに唯一の正解はありえない。<複数文化>という問いかけそのものをさらに流動化させ押し広げるべく、本書の試みに積極的に介入していただければ幸いである。(「はじめ」より)

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