書名:<複数文化>のために ―ポストコロニアリズムとクレオール性の現在― 著者:複数文化研究会編 網野善彦/鵜飼哲他 |
《目次》 |
《内容》 いかなるかたちであれ、均質な一体性をもった文化などというものは、ありえない。私たちが日々接しているのは、揺らぎや騒音をはらんだまま、どこまでも<複数>のものとして存在する<文化>なのである。こうした文化の複数的なありようを、ここではさしあたり<複数文化>という表現で呼ぶことにしよう。 <複数文化>とは、文化を固定的な実態として捉えようとするあらゆる試みに抗しながら、文化の複数性を徹底的に考え抜こうという、私たちのまなざしの質そのものを指し示す言葉でもあるのだ。(略)<複数文化>へと目を向けるということは、とりもなおさず、私たち自身が文化を流動化させ複数化させる主体となる、ということでもあるのだ。 このような<複数文化>へのまなざしを引き受けたとき、単一文化の神話が描き出してきたものとはまったく異なる風景が、私たちの目の前に立ち現れてくれるだろう。そうした風景のいくつかをさまざまな側面から提示し、文化の地図を書き変えることを目指して編まれたのか、本書である。ここには、<複数文化>という問いの可能性ができるかぎり多様な方向に開かれるよう、さまざまな切り口の論考が収められている。<複数文化>とは何かという問いに唯一の正解はありえない。<複数文化>という問いかけそのものをさらに流動化させ押し広げるべく、本書の試みに積極的に介入していただければ幸いである。(「はじめ」より) |