書名:ベンヤミンのアレゴリー的思考

著者:山口裕之

価格:3800円
サイズ:A5判 320
ページ 刊行日2003年2月 
ISBN4-409-04058-8 (専門/現代思想)

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目次

T 思考モデルとしての『カール・クラウス』
「全人間」――あるいは古典的ヒューマニズム/「デーモン」――あるいは二義性:初期ベンヤミンにおける「デーモン」をめぐる概念連関/さまざまな二義性の領域/デーモンの二義性  あるいは静止状態にある弁証法/「非人間」――あるいは現実的ヒューマニズム:古典的ヒューマニズムから現実的ヒューマニズムへの転換/人喰いと子供 あるいは破壊 と根源/根源と破壊としての引用/根源概念の両極性/神学的性格と唯物論的性格の媒介としての引用/政治的批評の技術としての引用/後期クラウスの政治姿勢に対する理解/新聞

U 古典古代と近代の相互浸透――『ボードレールにおける第二帝政期のパリ』
『ボードレールにおける第二帝政期のパリ』の位置:「ボードレール論」の構想の経緯と構成/クラウス論との並行性/「第二帝政期」の二つの版/『ボヘミアン』――社会の外側からのまなざし/「 遊歩者(フラネール)」――大衆の三つの機能:避難所としての大衆・個々人の痕跡の消滅/ヴェール・麻薬としての大衆/大衆の「地下的/冥界的」特徴/「近代」――二義性の支配権:英雄と近代/ボードレールとベンヤミンにおける「近代性/現代性」/ディゾルヴ・二義性・アレゴリー/詩的戦略――芸術の政治性に向けて

V 『ドイツ悲劇の根源』の内的構造
バロック悲劇の内実としての「自然史」:バロック悲劇の「内在性」と「歴史」/「被造物」の連関/時間性の空間化と神学――自然史の概念/アドルノの『自然史の理念』(補論)/アレゴリーとデーモン:アレゴリーと自然史/「廃墟」におけるアレゴリー的な見方の構造性/文字と意味/意味と悲しみ/アレゴリーとデーモン/デーモンの二義性/アレゴリーの「急転」/『ドイツ悲劇の根源』の三段階的構造/「根源」の概念:ベンヤミンの理念論/理念の構成的本質――モナドとしての理念/理念としての根源と歴史の概念

W 「アレゴリー的な見方」――ベンヤミンの思考
ベンヤミンの「弁証法的」思考/弁証法的形象としてのアレゴリー/方法としてのアレゴリー

註・あとがき・参考文献・索引


著者・内容紹介

山口裕之 やまぐち ひろゆき
1962年生。東京大学大学院総合文化研究科後期博士課程修了。東京外国語大学外国語学部助教授。ドイツ文化研究・ドイツ文学・メディア論。
著作:『ドイツ幻想文学の系譜ティークからシュトルムまで』(共訳、彩流社、1997)他。


俊英による初の本格的ベンヤミン研究

草稿まで踏みこんでなされた、ベンヤミン思考の根本的・徹底的な検証。ベンヤミンの「アレゴリー」という発想を三段構造として捉え、とくに弁証法でいう第二段階目にあたる「両義性」、あるいはデーモン的なもの、時代的にかけ離れたものの空間的な並置といった側面に焦点を置いた研究で、ベンヤミン中期の代表作「カール・クラウス論」をその範例としつつ、それを後期の「パサージュ論」中核のボードレール論、前期の集大成『ドイツ悲劇の根源』にそくして検証した稀有なもの。ベンヤミンについての刺身のつまめいた言及はなされても、本格的に立ち入った研究の少ない現状をみるにつけ、またむしろフランス系のひとたちのほうが積極的なベンヤミン論を提出している現状をみるにつけ、ベンヤミンの使用言語であるドイツ語の専門家による本書の意義は大きいだろう。


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