書名:
スピリチュアリティの現在
        宗教・倫理・心理の観点

監修:湯浅泰雄

価格:2500円
サイズ:46判上製 304
ページ 刊行日2003年10月 
ISBN4-409-04062-6 (専門・教養/生命思想・人間論)

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目次
霊性問題の歴史と現在  湯浅泰雄
WHOのスピリチュアリティ提案/哲学と科学、そして医療と経済発展/霊性と心身関係/ヒッピーのアジア探検(1950年代)/対抗文化の明暗(1960年代)/ポストモダン時代と大衆の感受性/倫理問題の基本をどう考えるか/科学方法論と霊性問題/人体の科学と気のエネルギー/キリスト教における霊性的体験/男性性と女性性の統合/心情的感受性、フェミニズム  

スピリチュアリティとキリスト教――身体性と三位一体論の関連を通して  永見 勇
はじめに/スピリチュアリティと宗教現象の現れ/イエスとパウロの霊体験/キリスト教とグノーシス―罪と二元論的世界/三位一体論と霊/終わりに

先端医療技術の倫理と宗教――いのちの始まりとスピリチュアリティ  島園 進
胚の研究・利用と再生医学:再生医学絵の期待 人クローンとES細胞 「いのちの始まり」の議論を超えて/物語が教えるもの:「いのち」とモノの間 まだ人間じゃない(Pre-Persons) 生命倫理とスピリチュアリティ/非宗教的な慎重論:人間性を危うくする生命科学 人間性と人間の尊厳/人間性とスピリチュアリティ:人間のいのちの重み 重さを失わせる医療

「スピリチュアリティ」を使う人々――普及の試みと標準化の試みをめぐって  葛西賢太
問題の所在:誰が「スピリチュアリティ」を使っているか? 「スピリチュアリティ」の用法と期待―本質主義と普遍主義/「スピリチュアリティ」を使う人々:聖霊の「スピリチュアリティ」 ごまかさずに人間的苦悩に直面する こころをどう扱うか 諸伝統・他者との出会いと止揚 「スピリチュアリティ」を使う人々/WHOによる「標準化」の試み:討議の背景 討議の経緯/「スピリチュアリティ」への思い入れを棚上げする

精神医学とスピリチュアリティ  大宮司信/村田和香
はじめに/スピリチュアリティの感覚面:変性意識状態について 憑依状態/スピリチュアリティと病識:現代医療と生活の質(QOL) 作業療法とスピリチュアリティ スピリチュアリティと病識/まとめ

ユングと自己のスピリチュアリティ――自己の四つの位相をめぐって  渡辺 学
はじめに/19世紀における思想形式―スピリチュアリズムと第二人格/コンプッレクス論における自己の問題―心全体の潜在的な統覚の中心/心的現実の立場と元型論の確立―中核的元型としての自己/集合性のさまざまな段階と布置/共時性と一なる世界―宇宙論的な自己/おわりに

フェミニスト神学の視点から社会倫理を再考する――スピリチュアリティ・平和をめぐって  岡野治子
フェミニズムのテーマは女性問題に限られない/スピリチュアリティとフェミニズム/フェミニズム理論による近代科学・学術のパラダイム批判/科学パラダイムの二分法/宗教と倫理に裏打ちされた新たな人間学と平和概念の問い直し/世俗化した現代社会における宗教の意味

人生物語としてのスピリチュアリティ――現代医療の現場で  宇都宮輝夫
どの場面でスピリチュアリティを考察するか/医療の場でのスピリチュアリティ/スピリチュアルな領域と宗教/スピリチュアリティとしての人生像/遅刻の誕生:時間規律の物理的実現可能性 教育と啓蒙 社会的制裁 時間規律の必要 全体的社会背景/人生物語=アイデンティティの基盤/人生段階図/むすび

監修者・執筆者略歴


監修者・内容紹介

湯浅泰雄 ゆあさ やすお
1925年生まれ。東京大学文学部。文学博士。山科大学、大阪大学、筑波大学、桜美林大学の教授を経て、退官。桜美林大学名誉教授。専門、関心分野は日本思想、倫理学、心理学、身体論、宗教と科学。今後の仕事の方向として、倫理と信仰の心理学的研究、科学方法論、気と東洋医学などの分野。
主著:『身体論――東洋的心身論と現代』(講談社学術文庫)、『気・修行・身体』(平河出版)(以上2点はニューヨーク州立大学出版局より英訳刊行)、『ユングとキリスト教』(人文書院、のち講談社学術文庫)、『ユングとヨーロッパ精神』『ユングと東洋』『共時性の宇宙観』(以上、人文書院)、『身体の宇宙性』『宗教経験と身体』(以上、岩波書店)、『和辻哲郎』(ちくま学芸文庫)ほか、現在、『湯浅泰雄全集』(全18巻、白亜書房)刊行中


癒し、ホスピス、安楽死、脳死、臓器移植、代替医療、医療人類学、臨床心理、臨床哲学、21世紀の人間理解に欠かせないスピリチュアリティの問題!

最近、スピリチュアリティ(霊性)という言葉が注目されている。20世紀の科学やテクノロジーが逢着したさまざまな壁、特に人間の「心」の問題は、世紀を超えて現代の思想状況のなかで大きな重要性を占めている。本書は、医療、宗教、哲学、心理のさまざまな局面から現代における霊性問題の広がりとそれが提示する論点を集約した意欲の論集。

「霊性問題の歴史と現在」(湯浅泰雄)「先端医療技術の倫理と宗教」(島薗進)のほか「スピリチュアリティとキリスト教」「精神医学とスピリチュアリティ」「ユングと自己のスピリチュアリティ」「人生物語としてのスピリチュアリティ」など。


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