NB-FR

まえがき

第一部　化学の思想史
第一章　火の化学――忘れられた、或る学問的闘争：忘れられた化学へ／元素と運動／三人の〈火の理論家〉たち／誤謬理論の行方／第二章　分析への認識論的障害：誤謬と無知／分析へと至る道／障害概念の列挙／原子論における障害／総括／第三章　物質との対話の想起のために――錬金術の哲学に向けて：二人の言葉、一人とひとつの間の言葉／逃れる言葉／活性した世界をなぞる言葉／腑分ける言葉／炉の傍らに住み着く言葉／第四章　バシュラールの化学哲学――科学論の考古学のために：古典的認識論の境界画定／化学性のゆらぎ／質量の哲学と現象工学／集積と配列／化学と数／結語

第二部　医学の思想史
第一章　医学的一元論者の肖像――医師ブルセの栄光と凋落：〈あら皮〉の裂け目から／〈吸血鬼〉／ブルセの哲学論争／病因論の〈教理問答〉／医学一元論の黄昏／第二章　刺激感応性――ある生理学的概念の運命：導入／黎明／展開／収拾／第三章　哲学者の生物学像――コントの場合：前提的確認／コントの環境概念／自立性問題をめぐって／心理学の忌避と局在への疾走／進化論との関わり／結語／第四章　生気論の運命――バルテズからベルナールへ：ベルテズ／ベルナール／放置され、仮眠し続ける概念／第五章　仮想世界の遺伝学――ゾラの遺伝的世界：〈自然主義〉の時代背景／ゾラの遺伝学／〈科学者.〉パスカル／結語

参考文献及び注
あとがき
初出一覧／人名索引

金森　修　かなもり　おさむ
１９５４年札幌市に生まれる。1985年パリ第一大学哲学博士。1986年東京大学博士課程単位取得退学。
現在、東京大学大学院教育学研究科教授。専攻、科学思想史、現代科学論
主著：『フランス科学認識論の系譜』（勁草書房、1994年、第12回渋沢・クローデル賞受賞）、『バシュラール』（講談社、1996年）、『サイエンス・ウォーズ』（東京大学出版局、2000年、第26回山崎賞・第22回サントリー学芸賞受賞）、『現代科学論』（共著、新曜社、2000年）、『科学論の現在』（共著、勁草書房、2002年）、『負の生命論』（勁草書房、2003年）、『ベルグソン』（ＮＨＫ出版、2003年）、『自然主義の臨界』（勁草書房、2004年）

科学思想史の正統的伝統を継承し、認識論の再生を目指す！

フランス系科学認識論（エピステモロジー）の伝統をベースにしながら、化学と医学という個別科学についての認識論構築への試み。18世紀の「火」をめぐる議論、錬金術論、バシュラールの化学哲学、19世紀初頭の病理学、生気論、ゾラの仮想的遺伝学論等々の考察から生み出される、科学史と思想史が独自に融合した科学思想史研究の見事な成果。渋沢・クローデル賞、サントリー学芸賞の著者の知的遍歴を集大成する一冊