書名:雑 音 考 思想としての転居 著者:樋口 覚 価格:2400円 |
目次 |
T 音と住居――漱石の『カーライル博物館』 漱石の仕掛けた罠/カーライルの屋根裏部屋/近代の宿痾としての雑音――ショーペンハウエルとカント
U 様々な住居 V 様々な音
W 音と表現 あとがき/初出一覧 |
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樋口 覚 ヒグチ サトル 街を歩けば拡声器ががなりたてる大音響、電車やバスに乗れば隣のヘッドホンから漏れるシャカシャカ耳障りな音、家にいてさえ、たとえば上階の子どもの走り回るドンドンいう重低音……。現代に生きるわれわれは、二十四時間あらゆる「雑音」に囲まれて休まる間がない。これは今に始まったことではなく、近代とともに起こった万人の悩みである。当然、悩みの数だけ雑音との格闘の劇がある。本書は、雑音との闘いにおいて徹底した近代の文学者・思想家を取り上げ、その様(当人にとっては真剣そのものだが、はたから見れば憐れで滑稽ですらある)を主に住居の問題とからめて見る。音はきわめて主観的なもので、「妙音」と「雑音」の違いは人により異なるから、各々の雑音対策の講じ方、つまり住居の設計への腐心は必然思想的な様相を帯びる。耳に瞼はないのである。第一章では『カーライル博物館』の夏目漱石を論じる。ほかにショーペンハウエル、カント、鴨長明、本居宣長、賀茂真淵、上田秋成、岡倉天心、永井荷風、谷崎潤一郎、萩原朔太郎、保田與重郎、井伏鱒二、太宰治、中原中也等が登場。間取り図版など挿入。 |