書名:
雑 音 考
   
思想としての転居

著者:樋口 覚
 

価格:2400円
サイズ四六判上製 264
ページ 刊行日2001年12月 
ISBN4-409-16082-6 (一般・教養/文学・批評)

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目次
T 音と住居――漱石の『カーライル博物館』
漱石の仕掛けた罠/カーライルの屋根裏部屋/近代の宿痾としての雑音――ショーペンハウエルとカント

U 様々な住居
本居宣長と賀茂真淵の書斎/鴨長明「方丈」/岡倉天心――二つの六角堂

V 様々な音
近代都市における三絃――永井荷風と谷崎潤一郎/三絃の系譜――聖三位一体の劇/「やぽん・まるち」――萩原朔太郎と安田與重郎の行進曲論

W 音と表現
『厄除け詩集』の漢詩訳――井伏鱒二の意識と無意識/闇のなかの黒い日記――太宰治の『盲人独笑』と『葛原勾当日記』/「歌」への奉仕――中原中也の近代/芳醇な言葉の蜜壺――幸田露伴の耳

       あとがき/初出一覧


著者・内容紹介

樋口 覚 ヒグチ サトル
1948年長野生。一橋大学社会学部卒業。文芸評論家。
著書:『富永太郎』(砂子屋書房)、『「の」の音言論』(五柳書院)、『一九四六年の大岡昇平』(新潮社、平林たい子賞)、『誤解の王国』(人文書院)、『三絃の誘惑』(人文書院、三島由紀夫賞)、『日本人の帽子』(講談社)、『グレン・グルードを聞く夏目漱石』(五柳書院)ほか多数。


街を歩けば拡声器ががなりたてる大音響、電車やバスに乗れば隣のヘッドホンから漏れるシャカシャカ耳障りな音、家にいてさえ、たとえば上階の子どもの走り回るドンドンいう重低音……。現代に生きるわれわれは、二十四時間あらゆる「雑音」に囲まれて休まる間がない。これは今に始まったことではなく、近代とともに起こった万人の悩みである。当然、悩みの数だけ雑音との格闘の劇がある。本書は、雑音との闘いにおいて徹底した近代の文学者・思想家を取り上げ、その様(当人にとっては真剣そのものだが、はたから見れば憐れで滑稽ですらある)を主に住居の問題とからめて見る。音はきわめて主観的なもので、「妙音」と「雑音」の違いは人により異なるから、各々の雑音対策の講じ方、つまり住居の設計への腐心は必然思想的な様相を帯びる。耳に瞼はないのである。第一章では『カーライル博物館』の夏目漱石を論じる。ほかにショーペンハウエル、カント、鴨長明、本居宣長、賀茂真淵、上田秋成、岡倉天心、永井荷風、谷崎潤一郎、萩原朔太郎、保田與重郎、井伏鱒二、太宰治、中原中也等が登場。間取り図版など挿入。


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