書名:帝国日本の英文学 著者:齋藤 一 定価:2520円
(本体価格2400円+税120円) |
目次 |
序 章 帝国日本の英文学
第一章 済州島のロビンソン:情熱と冷静のあいだで/アンビヴァレントな人、市河三喜/〈ロビンソン〉としての自己成型/脱亜入欧の葛藤
第二章 英語青年の本分:日露戦争とコンラッド「青春」/忍び足でやってくるネメシス/ネメシスの眼のもとに
第三章 沖縄からの返書:国語と英語/岡倉由三郎の英文学/岡倉由三郎の言語学/沖縄からの返書/「英文学」の再構築に向けて
第四章 日本の闇の奥:西洋植民地主義批判の場所――『オルメイヤーの阿呆宮』/左翼「転向者」ジッド――『コンゴ紀行』と『闇の奥』/西洋植民主義批判としての『コンゴ紀行』/『闇の奥』翻訳と中野好夫/「恭順蛮人」とは誰のことか?/霧社事件と日本の台湾高山族支配の歴史/「恭順蛮人」と日本植民地主義の記憶
第五章 英文学者、中島敦:太平洋戦争と英文学/『光と風と夢』の政治性/西洋植民地主義批判者としてのヴァレリー/『光と風と夢』の政治性/スティーヴンソンと「私」の関係
終 章
あとがき/参考文献
著者・内容紹介 |
齋藤 一 さいとう・はじめ
1968年4月25日、
主な業績:「日本の『闇の奥』」(名波弘彰ほか編『植民地主義とアジアの表象』筑波大学文化批評研究会、1999年)、「中島敦、スティーヴンスンを読み破る」(『立命館言語文化研究』14巻1号)、「済州島のロビンソン」(筑波大学文化批評研究会編『〈翻訳〉の圏域』筑波大学文化批評研究会、2004年)、「英文学の脱構築――日本における英文学と〈脱亜入欧〉および〈近代の超克〉との関係についての一試論」(博士論文、2004年)、酒井直樹『過去の声――
一八世紀日本の言説における言語の地位』(共訳、以文社、2002年)など。
イギリス小説、特にコンラッド作品とその日本における受容と変容のポリティクスについて。
大日本帝国期――「脱亜入欧」をめざしてアジア侵略を開始した19世紀末から、「近代の超克」を掲げて破滅に向かっていった1940年代にかけて、英文学が、このような国家プロジェクトとどのような関係があったのか。大日本帝国と英文学の密接な関係をあきらかにしつつ、テクストの精読を通じて西洋人の他者(非西洋)への視線を内面化する「英文学」という行為が、帝国を補完する行為でありえたこと、そしてそれゆえに持つ新たな可能性を示す。