書名:
タンタンとエルジェの秘密

著者: セルジュ・ティスロン
訳者;青山 勝・中村史子

定価:2940円 (本体価格2800円+税140円)
サイズ:A5判上製 208
ページ 刊行日2005年6月 
ISBN4-409-18001-0 (教養書/文学・絵本−コミック批評)

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目次

はじめに

第一章 「タンタンの冒険旅行」の秘密融合の状態から世代の分化形成へ/過渡期――1938年から1942年まで/家系の問題の解消/第二章 エルジェの家族の秘密/第三章 「タンタン」における三世代の秘密第一世代の秘密――カスタフィオーレ /第二世代の秘密――デュポン&デュポン/ 第三世代の秘密――タンタン、アドック、トゥルヌソル/第四章 二つに引き裂かれたエルジェ――「家なき子」の和解/第五章 「タンタン」と「歴史的事実」

結論

あとがき


著者・内容紹介

著者:セルジュ・ティスロン
 
1948年生。精神科医、精神分析家。1975年リヨン第1大学医学部で博士号を、1984年パリ第10大学で心理学の博士号を取得。現在は、さまざまな機関で臨床に携わりつつ、パリ第7大学等で教鞭も取っている。『精神分析家を訪れるタンタン』(1985年)で一躍著名となり、以来、「イメージ」と「家族の秘密」をテーマとする多くの著書を発表し続けている。著書に『マンガの精神分析』(1987)、『恥』(1992)〔大谷尚文・島津孝仁訳、法政大学出版局、2001〕『イメージの精神分析』(1995)、『イメージのなかの幸福』(1996)、『明るい部屋の謎』〔 青山 勝訳、人文書院、2001〕、『私たちの家族の秘密』(1999)、『いかにして精神はものに宿るか』(1999)、『今日の小さな神話』(2000)、『影響される子どもたち』(2001)、『露出過多の親密性』(2001)、『いかにヒッチコックは私を治療したか』(2003)ほか多数。また1975年にマンガによる医学博士論文を提出して以来、マンガ家としての活動をも行っている。『汚れた耳(1995)』、『精神分析日誌』(2003)等。


70年以上にわたって世界中の読者を惹きつけてやまない「タンタンの冒険旅行」の魅力を、フランスの精神分析家セルジュ・ティスロンが独自の視点から解き明かそうと試みたもの。「タンタンの冒険旅行」にはさまざまな「謎」がある。本書においてティスロンは、その謎に――近年の研究が明らかにした作者エルジェの伝記的事実と突きあわせながら――迫り、「タンタンの冒険旅行」全体の再発見へと読者を誘っている。
 タンタンには家族が見当たらないが、それはどうしてなのか。そもそも「タンタン」という名前は、姓なのか、名なのか、それともあだ名なのか。デュポン&デュポン(Dupont/Dupond)は、どう見ても双子に違いないが、だとしたらどうしてその名前の綴りが違うのか。なぜエルジェはカスタフィオーレにいつも『ファウスト』の「宝石のアリア」ばかりを歌わせているのか。どうしてアドック船長には、発音は同じだが綴りの異なる姓をもつ先祖――アドック卿――がいて、その先祖は太陽王ルイ一四世からムーランサール城を下賜されたのか。どうしてトゥルヌソル(ビーカー教授)はetc。こうした一見瑣末な謎のひとつひとつに、繊細かつ機敏な注意を傾け、しかし興ざめな解釈ゲームに私たちを誘い込むことなく、かすかに察知される隠れた屈曲を解きほぐしつつ「タンタン」全体を貫く創作の力学を徐々に素描していく。その手際はさながらシャーロック・ホームズのように――タンタンのように――じつに鮮やかだ。


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