書名:絵本をひらく

者:灰島かり・谷本誠剛

定価:2625円 (本体価格2500円+税125円)
サイズ:A5判上製 304
ページ 刊行日2006年2月 
ISBN4-409-18002-9(教養書/絵本研究)

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目次

はじめに

T 心の渦を描く
モーリス・センダック『がいじゅうたちのいるところ』 
内面への深い旅――『かいじゅうたちのいるところ』の表紙を考える  灰島かり
片山 健『どんどん どんどん』
 

あるひ、ひとりの子どもがどんどんゆきました――「でかパンをはいた神」が絵本になるとき  石井光恵
長谷川集平『トリゴラス』
トリゴラスはなぜ暴れるの?――ポップな絵の力が描き出す少年の異性への想い  中川素子
内田麟太郎『おれたち、ともだち!」シリーズ
ことばをよろこばせる絵 絵をよろこばせることば――「おれたち、ともだち!」シリーズを絵本の文章の側から考える  村中李衣

コラム 絵本の翻訳(田中美保子)/絵本の始まり(白井澄子)

U ポストモダンの作家たち
アンソニー・ブラウン『こしぬけウィリー』
こしぬけウィリーはやっぱりこしぬけ?――遊びいっぱいのポストモダン絵本  灰島かり
きたむらさとし『ぼくネコになる』
軽やかさの魅力――『ぼくネコになる』のひょうひょうとした孤独  田中美保子
ピーター・シス『星の使者』
真実を見つづけようとした星の使者――ディテールに込められた時代の読みとり  中川素子
ジョン・バーニンガム『なみにきをつけて、シャーリー』
大人と子どもの複雑な関係――『なみにきをつけて、シャーリー』に描かれるふたつの世界  神谷 友
クリス・ヴァン・オールズバーグ『名前のない人』
不可解さの魅力――『名前のない人』の仕掛け  藤本朝巳
ジョン・シェスカ&レイン・スミス『三びきのコブタのほんとうの話』
「三びきのコブタ」のオオカミは紳士だった――やむにやまれぬパロディ心  谷本誠剛

コラム 絵本と印刷の歴史(今井良朗)/絵本とマンガ(笹本純)

V ファンタジーの作り方
レイモンド・ブリッグズ『さむがりやのサンタ』
リアリズムでサンタクロースを描く――『さむがりやのサンタ』を考える  笹本 純
トミー・ウンゲラー『すてきな三にんぐみ』
すてきな三にんぐみの秘密――昔話と現実のハイブリッド  西村醇子
クェンティン・ブレイク『みどりの船』
時をこえるみどりの船――永遠はつかの間に宿る  笹田裕子
ヤノッシュ『くまのサーカス ザンパーノ』
不思議な登場人物が創り出す、不思議な世界――ザンパーノおじさんとくまの謎の関係  神谷 友
長 新太『ノコギリザメのなみだ』
『ノコギリザメのなみだ』のナンセンスを楽しむ――ばかばかしさの奥にある哲学  岩崎真理子    
チョン・スンガク『くらやみのくにからきたサプサリ』
民族のダイナミズムを伝えるサプサリ ――韓国固有の文化に根ざした絵本を子どもたちに  大竹聖美

コラム 絵本と昔話(藤本朝己)/絵本の読み聞かせ(依田和子)

W 赤ずきんちゃんの位相
絵本による 昔話の再創造の可能性  村中李衣
赤ずきん絵本の絵を楽しむ  笹本 純
赤ずきんは強い女の子になれるか?  灰島かり

コラム マザーグース絵本(夏目康子)/絵本とアート(中川素子)

X 心おどる形と色
イエラ・マリ『木のうた』
四季の移り変わりをみつめた『木のうた』――永遠に続く円環構造が描く自然のリズムに抱かれて  中川素子
エリック =カール『はらぺこあおむし』
あおむしは おなかがぺっこぺこ――卓抜なアイデアと遊び心を絵本につめこんで  石井光恵
クヴィエタ・パツォウスカー『ふしぎなかず』
五感で楽しむ『ふしぎなかず』――空間を感じさせる絵本  加持ゆか
エロール・ル・カイン『おどる12人のおひめさま』
12人のおひめさまが織りなすシミュラークルの世界――昔話から広がるイメージ  沼賀美奈子
ブルーノ・ムナーリ『木をかこう』
木をかこう つくってみよう 遊んでみよう――創造力を引き出す絵本  今井良朗
ガブリエル・バンサン『アンジュール――ある犬の物語』
絵だけで語るということ――言葉のない絵本の傑作『アンジュール』  笹本 純

コラム 絵本とブックデザイン(今井良朗)/絵本とキャラクター(神戸万知)

Y 壁を乗り越える子どもたち
レオ・レオーニ『あおくんときいろちゃん』
グラフィック・デザインの技とアイデンティティの探求と――『あおくんときいろちゃん』に読む友だち大好きの子ども心  石井光恵
G・ハレンスレーベン&A・グットマン『リサとガスパールのたいくつないちにち』
子どもの心に沿って――リサとガスパールの物語  依田和子
佐野洋子『さかな1ぴきなまのまま』
一〇〇万回生きたあとで――さかな1ぴきなまのまま  村中李衣
ディック・ブルーナ『うさこちゃんとどうぶつえん』
世界中の子どものともだち――半世紀愛されつづけてきたうさこちゃん  岩崎真理子
パット・ハッチンス『ティッチ
ちいさなティッチの大逆転――あざやかに描かれた子どもの心の成長  谷本誠剛

あとがきにかえて
作家別主要作品リスト/用語解説/絵本研究文献ガイド/執筆者紹介


編者・内容紹介

谷本誠剛 たにもと・せいごう
1939
年生。東京教育大学大学院英米文学科修士課程修了。文学博士。関東学院大学名誉教授。1998年より6年間日本イギリス児童文学会会長。研究は絵本を含め児童文学から宮沢賢治まで多岐にわたる。『児童文学入門』(研究社、1995)、『宮沢賢治とファンタジー童話』(北星堂書店、1997)、B・アトベリー『ファンタジー文学入門』(共訳、大修館書店、1999)、V・ワトソン他『子どもはどのように絵本を読むのか』(監訳、柏書房、2002)ほか翻訳多数。2005
年没。

 灰島かり はいじま・かり
国際基督教大学卒。
PR誌編集をへて、199495年、英国のサリー大学ローハンプトン大学院で児童文学を学ぶ。子どもの本の翻訳者、研究者。白百合女子大学講師。『絵本翻訳教室へようこそ』(研究社、2005)、『英米児童文学の宇宙』(共著、ミネルヴァ書房、2002)、R・サトクリフ『ケルトの白馬』(ほるぷ出版、2000)、A・ファイン『チューリップタッチ』(評論社、2004)、A・ブラウン作『森のなかへ』(評論社、2004)ほか翻訳多数。


モーリス・センダックから、「リサとガスパール」まで、今最も読まれる絵本作家たちをその代表作の読みときを通じて論じる

英米を中心に、チェコやイタリア、韓国、日本の作家ら30名を取り上げ、アート、文学、教育、メディアなどに関わり、現代の絵本を論じる際に重要な視点・論点を明らかにしながら個々の作品を読み解く。絵本論の新しい地平を拓く画期的試み。作品論のほか、絵本をめぐるさまざまなトピックについてのコラム、「赤ずきん」絵本をめぐる競作論文を収録。作家紹介と作品リスト、絵本研究に必須の参考文献リストが付く。


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