書名:アメリカ都市教育政治の研究20世紀におけるシカゴの教育統治改革 著者:小松茂久 定価:3990円
(本体価格3800円+税190円) |
目次 |
序 章
第1節 都市教育政治研究の目的 1.教育政治の概念/2.教育政治研究における価値問題と研究方法/3.都市教育政治研究の意義/4.都市教育改革の理論
第2節 先行研究の検討 1.アメリカにおける研究/2.わが国における研究/第3節 本書の構成
第T部 都市教育政治の歴史
第1章 革新主義期教育政治研究の動向と課題―1980年代半ばまでの研究を中心として―:第1節 アメリカ教育史の評価をめぐる1960年代の動向 1.公立学校進歩史観とその批判 2.革新主義期教育改革における「能率」と「社会的統制」/第2節 ラディカル・レビジョニズムと教育政治史研究の階級的視点 1.アメリカ史学会とラディカル・レビジョニズム 2.M・B・カッツの教育史研究の意義と課題 3.伝統的教育史学批判とレビジョニズム 4.S・ボウルズ、H・ギンタスとレビジョニズム 5.ラディカル・レビジョニズムの意義と限界/第3節 ポスト・レビジョニストの都市教育政治史研究 1.民主的統制説 2.組織統制説 3.動態的階級葛藤説 4.ポスト・レビジョニストの教育政治研究の意義
第2章 革新主義期教育政治研究の動向と課題―1980年代半ば以降の研究を中心として―:第1節 アクターの多様化 1.事例対象都市の拡大と政治アクターの多様化 2.教育政治研究におけるジェンダーの視点/第2節 人種・民族・教員組合 1.教育政治における人種と民族 2.教育政治と教員組合運動
第3章 教育統治改革をめぐる政治過程―革新主義期のシカゴを事例として―:第1節 シカゴ公立学校創設期の実態と課題 1.公立学校の創設と教育行財政 2.19世紀後半のシカゴの学校教育/第2節 ハーパー委員会報告の公表と影響 1.ハーパー委員会の結成と委員会報告 2.ハーパー委員会報告の影響/第3節 シカゴ教育統治改革(オーティス法)をめぐる教育政治の動態 1.1910年代半ばまでの教育政治 2.オーティス法をめぐる政治過程 3.1910年代の政治過程の意味
4.1920年代前半のシカゴ教育政治
第U部 都市教育の課題と改革の理論
第1章 社会変動と都市教育の課題:第1節 戦後の都市の変動と都市教育 1.黒人とヒスパニックの急増 2.都市の貧困・スラム問題 3.マイノリティ児童生徒の急増と人種分離学校 4.人種・民族別の教育格差/第2節 都市労働市場の変貌と教育問題 1.都市経済の変動 2.学歴と失業問題 3.ゲットーアンダークラスとマイノリティ児童生徒/第3節 人種分離学校廃止問題とシカゴ教育政治 1.人種分離学校廃止運動 2.シカゴの教育改革動向 3.1990年代の都市教育改革
2章 都市教育改革の理論:第1節 ソーシャル・キャピタルとネットワーク 1.ガバナンスの概念 2.教育ガバナンス論 3.ソーシャル・キャピタル論 4.ソーシャル・キャピタルと教育ガバナンス/第2節 都市政治研究におけるアーバン・レジーム論 1.アーバン・レジーム論の系譜 2.C・N・ストーンのアーバン・レジーム論 3.レジーム理論批判/第3節 シビック・キャパシティー論 1.ソーシャル・キャピタル批判 2.ソーシャル・キャピタルとシビック・キャパシティー 3.シビック・キャパシティーの概念/第4節 都市教育改革とシビック・キャパシティー 1.CCUEプロジェクト11都市のシビック・キャパシティー 2.3都市の事例 3.都市教育改革の困難性
第V部 シカゴ教育統治改革の動態
第1章 1980年代半ばのシカゴの学校と教育行政:第1節 シカゴの児童生徒と教育政策課題 1.シカゴの児童生徒 2.教育行政組織と教育政策課題/第2節 学校改革への胎動 1.1980年代半ばのイリノイ州教育改革の動向 2.イリノイ州1985年都市学校改善法 3.1980年代前半のシカゴ教育行政の動向 4.教育改革と市民運動 5.教員組合および産業界等の教育改革への対応
第2章 学校改革の理論とシカゴ学校改革法(1988年):第1節 シカゴ学校改革の理論 1.学校の再構築と学校を基盤とした経営(School-Based
Management=SBM) 2.シカゴのSBM論/第2節 学校改革案をめぐる政治過程 1.教員ストライキとその影響 2.市長のリーダーシップと市民団体 3.ビジネスとメディアの役割/第3節 州議会での学校改革法成立過程 1.州議会の政治環境 2.学校改革法の上程と審議の過程
第3章 学校改革修正法 (1995年) と教育統治改革:第1節 学校協議会の運営と学校改革修正法(1995年) 1.学校改革法(1988年)と学校協議会の設置 2.学校協議会の実態と課題 3.シカゴ学校改革修正法(1995年) 4.学校協議会と児童生徒の学力/第2節 アカウンタビリティー政策と教育統治の市長一元化 1.ニュー・アカウンタビリティーの概念 2.ニュー・アカウンタビリティー政策 3.市長主導の教育統治 4.シカゴの市長主導教育統治/第3節 シカゴ教育統治改革とシビック・キャパシティー 1.シカゴのニュー・アカウンタビリティー政策への批判的視座 2.ニュー・アカウンタビリティー政策と専門職アカウンタビリティー 3.教育統治改革モデルと制度選択 4.シカゴのレジームとシビック・キャパシティー
終章 アメリカ都市教育政治研究の意義:第1節 アメリカ都市教育政治研究の成果と課題 1.革新主義期教育政治の学説とシカゴの実態分析 2.第二次大戦後の都市教育の課題と現代教育改革の理論 3.シカゴ教育統治改革の動態/
第2節 わが国の教育行政研究への示唆 1.「教育統治」「教育政治」「教育行政」の概念 2.わが国における教育行政の新展開 3.わが国におけるシビック・キャパシティー論の可能性
引用・参考文献/あとがき/人名索引/事項索引
著者・内容紹介 |
教育を手に入れた人々、手に入れられなかった人々…教育をめぐる公正、選択、質をめぐる葛藤はどのように解決されるべきなのか。政治と深く関連する教育問題解決の可能性をさぐる。
「教育政治」とは耳慣れない言葉であるが、教育においても政治は大きな影響を及ぼしており、教育における価値の配分、その過程など「誰が何をいつどのように手に入れるのか」についての研究は益々重要性を増している。教育を手に入れたくても入れられなかった下位貧困階層の人々、人種・民族あるいはジェンダーにおけるマイノリティである人々の教育上の不利益をどのように改善するのか。いかなる教育政治の構造や機能がこういった人々を疎外してきたのか。本書では深刻な都市教育問題を抱えながらも、地味ではあるが、試行錯誤を繰り返し、今日では教育改革の先進都市としての名をほしいままにしている都市シカゴをとりあげ、20世紀のアメリカ都市教育政治改革の歴史を明らかにし、市民の一人ひとりの能力を高めて問題の解決にあたっていくことの有効性を検証する。著者は神戸学院大学人文学部教授