書名:
インセスト幻想
     人類最後のタブー

著者:原田 武
 

価格:2300円
サイズ 四六判上製 234
ページ 刊行日2001年11月 
ISBN4-409-24065-X

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目次
序章 インセストの禁止と侵犯:インセストタブー、その広さと強さ/制裁と刑罰/かくも多くの侵犯者たち/インセスト容認の言説/インセストの問題性

第一章 近親への慾動は特殊・例外的なのか:社会の闇に隠れて/ときには制度化に近づいて/実態はどうなのか/母息子インセストの問題/インセスト幻想の普遍性/隠蔽、偽装、転置/『ハムレット』『ウェルテル』『嵐が丘』/インセストの概念、その多様さ/禁止と侵犯の交錯

第二章 近親婚禁忌の起源について:「家族関係の混乱」説/「なじみ」の理論/「なじみ」でインセストは防げるのか/遺伝上の 害悪/マイナスの影響はどの程度なのか/動物にもあるインセスト回避/動物と人間/「交換」の理論――レヴィ-ストロース/レヴィ-ストロース説の有効性/インセストタブーの謎

第三章 インセストタブーと宗教:インセスト、神々の特権/高貴な血筋とインセスト/穢れと聖性/災いにして幸運/インセストを容認する宗教/思い上がりの危険/性の自由と宗教/インセスト行動と宗教感情/教皇になった侵犯者/侵犯、恐怖にして喜び/無垢な侵犯

第四章 家族が愛人に変わるとき:家族とは何なのか/虚構としての家族/ファミリー・ロマンス/密室のなかでの家族/家族という危険な関係/家族の絆とインセスト

第五章 母と息子、父と娘:母と子/母息子インセストの助長と抑止/母息子インセストとエディプス・コンプレックス/子を呑み込む母/母性憎悪の 論理/それでもすがりつきたい母/父娘姦、暴力的か合意のうえか/父が娘に求めるもの/ピグマリオン・コンプレックス/母親の反応

第六章 きょうだいインセストとその周辺:きょうだいインセストの問題/求め合うきょうだいたち/「妹(いも)の力」/錬金術――インセストの創造力/密室とユートピア/インセストは死の匂い/ 自閉行為としてのインセスト/「双生児」であること、幸運にして不幸/気負いもなく、罪悪感もなく

終章 インセストはなぜ悪なのか:容認論の数々/心の傷/秩序破壊としての悪/「尊厳」あるいは「畏怖」

     あとがき/主な参考文献/人名索引


著者・内容紹介

原田 武 ハラダ タケシ

1933年生れ。現在、関西福祉科学大学教授。大阪外国語大学名誉教授。専攻はフランス文学。
著書:『異端カタリ派と転生』(人文書院、現在品切)、『プルーストと同性愛の世界』(せりか書房)、『プルーストに愛された男』(青山社)など。
訳書:ジュリアン・グリーン『アシジの聖フランチェスコ』(人文書院、現在品切)、同『信仰の卑俗化に抗して』(青山社)など。


インセストすなわち近親相姦、父親が娘と、母親が息子と、あるいは姉弟、兄妹のあいだの禁じられた愛の形。人間関係をめぐる数々のタブーを克服してきた近代社会において、人類最後のタブーとされながら現代でもその違犯の事例がけっして少なくない特殊な性愛現象。厳重な禁止に背いておぞましい行為にひきずられざるを得ない人間の「哀しさ」を描いた古今東西の数多くの文学作品を主としてひもときながら、社会的、宗教的観点からも考察を加える。母子の癒着や父娘相姦の家庭内暴力など現代もっともホットな問題にも目を配りながら、インセストを人間の精神と文化の問題として冷静かつ包括的にあつかった極めて注目すべき労作。


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