書名:
森と海を結ぶ菜園家族
       21世紀の未来社会論

著者:小貫雅男/伊藤恵子

定価:2310円 (本体価格2200円+税110円)
サイズ:A5判上製 448
ページ 刊行日2004年9月 
ISBN4-409-24070-6 (教養/エコロジー・ライフスタイル)

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目次
はじめに

第一章 「菜園家族」構想の基礎
閉塞の時代―「競争」の果てに:「拡大経済」と閉塞状況  市場原理と家族  「虚構の世界」  生きる原型/「菜園家族」の構想―週休五日制による:三世代「菜園家族」  新しいタイプの“CFP複合社会”  「菜園家族」の可能性  主体性の回復と倫理  予想される困難  家族小経営の生命力/大地に明日を描く:ふるさと―土のにおい、人の温もり  心が育つ  家族小経営の歴史性

第二章 「菜園家族」構想と今日的状況危機のなかのジレンマ  誤りなき時代認識を  「構想」の可能性と実効性  誰のための、誰による改革なのか  グローバリゼーション下の選択  二一世紀の“暮らしのかたち”を求めて

第三章 「菜園家族」の世界史的位置
一九世紀、苦闘の思索と足跡:資本の論理と人間疎外  「恐慌」という名の致命傷に向き合う  新しい思想家・社会改革者の登場  オウエン構想の意義と限界  ニューハーモニー実験の光と影  資本主義の進展と新たな理論の登場  一九世紀、思想と理論の 到達点  マルクス経済学研究と『資本論』/一九世紀における未来社会論:人類始原の自然状態  自然状態解体の論理  資本の論理と恐慌  世界恐慌の不可避性と展望  マルクスの未来社会論  導き出された共有化論  共有化の成立条件  共有化論の欠陥と誤り

第四章 自然社会への道
生産手段の「再結合」:B型発展の道  「菜園家族」と「地域」  特性としての揺籃期  B型発展の本格形成期  “CFP複合社会”の展開過程/人間の家族の視点から:個体発生と「家族」  「家族」がもつ根源的な意義  人間が人間であるために  生産手段「再結合」の意義  自然社会への究極の原理  高度 に発達した自然社会へ

第五章 日本列島が辿った運命森と海を結ぶ流域循環  森から平野への移行  高度経済成長と流域循環  「日本列島改造論」  断ち切られた流域循環  終末期を迎えた「拡大経済」  幻想と未練の果てに  重なる二つの終末期

第六章 森と海を結ぶ「菜園家族」
「菜園家族」と流域循環型地域圏(エリア)森はなぜ衰退したのか  流域地域圏(エリア)構想と市町村合併問題  二一世紀、山が動く  森が甦る契機  地域政策の重要性/「家族」と「地域」―共同の世界:変化のなかの「地域」概念  現存「集落」の歴史的性格  “共同 の世界”を支えたもの  身近なことから  「集落」再生の意義/菜園家族エリアの構造、その意義: 「集落」の再生と「なりわいとも」  基本共同体「村なりわいとも」  森と海を結ぶ「郡なりわいとも」  非農業基盤の「匠商(しょうしょう)家族」  「匠商家族」と「なりわいとも」  「なりわいとも」の歴史的意義

第七章 二一世紀、近江国(おうみのくに)循環型社会の形成
森と海を結ぶ流域循環型地域圏(エリア)モデルの設定:湖国近江、滋賀  近江国(おうみのくに)、十一の流域循環型地域圏(エリア)モデル  aモデル選定の経緯/ aモデル「犬上川・芹川流域循環型地域圏(エリア)aモデルの地理的範囲  平野部〜多賀町の一部と甲良町・豊郷町  平野部〜彦根市  山間部〜多賀町  雨乞い信仰と流域地域圏(エリア)  ある老夫婦 の半生  民話『幸助とお花』の世界より〜循環の思想〜/地域認識の深化と変革主体:作業仮説の設定とその意義  螺旋(らせん)円環運動と変革主体の形成/犬上川・芹川流域循環型地域圏(エリア)形成の目標と課題:流域循環型地域圏(エリア)構築の基本姿勢  土地利用の視点から―田園地帯―  土地利用の視点から―森林地帯―  森再生の決め手  彦根市街地および三町の中核街  自立的な経済圏成立の前提  国・地方自治体の役割と政策投資/近江国(おうみのくに)循環型社会から世界へ:近江国(おうみのくに)広域圏の一体性  歴史における主体世的実践の役割  理想を地で行く

文献案内/あとがきにかえて


著者・内容紹介

小貫雅男  おぬき まさお
1935年中国東北(旧満州)、内モンゴル・ホルチン左翼中旗・鄭家屯生まれ。1963年大阪外国語大学モンゴル語学科卒、65年京都大学大学院文学研究科修士課程修了。大阪外国語大学教授を経て、現在、滋賀県立大学人間文化学部教授。専門は、モンゴル近現代史、遊牧地域論。
著書:『遊牧社会の現代』(青木書店)、『モンゴル現代史』(山川出版社)、、『異文化体験のすすめ』(共著、大阪書籍)、『騎馬民族の謎』(共著、学生社)、『モンゴル史像の再構成』(モンゴル語版、高槻文庫)、『遊牧社会―現在と未来の相克の中で―』(モンゴル語版、高槻文庫)、『菜園家族レボリューション』(社会思想社)など。
映像作品に『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』(共同制作、大日)がある。

伊藤恵子  いとう けいこ
1971年岐阜県本巣群生まれ。1995年大阪語国語大学モンゴル語学科卒、1997年同大学大学院外国語学研究科修士課程修了、1999年総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程中退。現在、滋賀県立大学人間文化学部非常勤講師、里山研究庵Nomad研究員。専門は、遊牧地域論
論文:「遊牧民家族と地域社会―砂漠・山岳の村ツェルゲルの場合―」(滋賀県立大学人間文化学部紀要『人間文化三号)など。映像作品に『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』(共同制作)、そのモンゴル語版『Malchin Zaya』(製作統括)がる。


ゴビ・遊牧民に学び、地域づくりの可能性を追求したい! 都市から山里へ、また相互の循環の輪のなかでつくる新しい生き方の提示

「大地」から切り離され、「いのち」から遠ざかった現代の都市型社会に生きざるを得ないわたしたち。しかし、わたしたちはどうあがいても、この母なる大地から離れて生きてはゆけない、結局そこに帰ってゆかざるを得ないのではないか……。

永年のモンゴル遊牧社会のフィールド調査から見えてきた一つの「生きる原型」──それとの対比から、琵琶湖東の里山研究をベースに「森(山・里)と海(湖・川)」を連結・循環するライフスタイル、未来社会への積極的な方向性を提示する。週の2日は従来型の収入確保の職業に就き、あとは自給自足の家庭菜園に従事するという「週休5日」の大胆至極の提案が内包する、新しいタイプの生き方は、疲弊しきった現代人に思いもかけない逆転の発想をもたらすことだろう。

著者関連事項:映像作品『四季・遊牧─ツェルゲルの人々─』は全国自主上映展開中。

* 里山研究庵 NOMADのHPへ
   http://www.satoken-nomad.com/

 


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