書名:「ねずみ男」精神分析の記録 著者:
フロイト 定価:2835円
(本体価格2700円+税135円) |
目次 |
ま え が き
第1部 「ねずみ男」精神分析の記録
「ねずみ男(エルンスト・ランツァー)」年譜/「ねずみ男」精神分析の記録…高橋義人訳/余白の書き込み/登場人物一覧
第2部
発表論文要約/フロイトと「ねずみ男」の治療…笠井 仁/「ねずみ男」の病歴と生活史…井口由子/フロイトの表現から__訳者覚書…高橋義人
第3部
「ねずみ男」の技法論的検討…北山 修
あとがき
監訳者・内容紹介 |
北山 修 きたやま おさむ
精神分析医。1946年、淡路島に生まれる。1972年、京都府立医科大学卒業。札幌医科大学内科研修生を経てロンドンのモーズレイ病院およびロンドン大学精神医学研究所で卒後研修。帰国後、北山医院(現南青山心理相談室)院長。1991年より九州大学教育学部カウンセリング講座助教授、1994年同教授。2000年より九州大学大学院人間環境学院教授、2001年より同大学院医学研究院教授を兼任。医学博士。国際精神分析協会正会員、日本精神分析学会会員、日本語臨床研究会事務局長。
主著:『悲劇の発生論――精神分析の理解のために』(金剛出版、1982年)、『錯覚と脱錯覚――ウィニコットの臨床感覚』(岩崎学術出版社、1985年)、『心の消化と排出――文字通
りの体験が比喩になる課程』(創元社、1988年)、『見るなの禁止』(岩崎学術出版社、1993年)、『言葉の橋渡し機能――およびその壁』(岩崎学術出版社、1993年)、『自分の居場所』(岩崎学術出版社、1993年)、『幻滅論』(みすず書房、2001年)、『精神分析理論と臨床』(誠信書房、2001年)
監訳書:D・W・ウィニコット『抱えることと解釈』(岩崎学術出版社、1989年)、P・J・マホーニィ『フロイトの書き方』(誠信書房、1996年)、『D・W・ウィニコット『小児医学から精神分析へ』(岩崎学術出版社、2005年)
フロイトの技法的な細かな仕事ぶりを目の当たりにする臨場感に満ち満ちた精神分析の真髄
一人の精神分析家が他人の人生に参加し、観察し、記録し、考え、生きるということとはどういうことか。フロイトが遺した「ねずみ男」と呼ばれる唯一の精神分析の記録の完全訳。この稀有な治療記録を初心者が精神分析を学ぶテキストとしても活用できるよう、技法論的検討をさまざまに加えた解説および註を充実した。
本書は、通称ラットマン(ねずみ男)と呼ばれるケースの「記録」を、独語から邦訳したものである。フロイトが遺した唯一の「精神分析の記録」だと言っていい。
第1部には、臨床の「物語」として読めるよう、高橋義人の訳文に年譜と登場人物の解説を付し、訳文そのものも元の記録文を壊さないよう配慮しながら挿入句を加えている。また、初心者が精神分析を学ぶためのテキストとしても使えるよう、注も詳しく付した。さらに第2部と第3部には、検討会に参加した笠井仁、井口由子、私の3人が、当時のフロイト、患者と家族、そしてその精神分析治療としての解説を添えた。同時に、高橋の書き留めていた覚書から今回の解読過程で得られたものを一部公開して、フロイトの言葉が持つ奥行きを抽出してもらった。別に第2部の初めには、フロイトが本治療記録を踏まえて発表した論文を、読者の便宜を考えて人文版を参考にして要約してある。
この本は長い年月を経て多くの人々の共同討議によって成ったところがあるが、それぞれの部分に関し最初から最後まで主体的につきあった責任者が、最後の発表に際し各々の訳文や原稿を個々に担当するという形式をとった。
これによりフロイト精神分析の真髄を味わってもらい、我が国における精神分析の営みのさらなる深化を期待したい。
(本書まえがき)より