書名:近代精神医学の成立 「鎖解放」からナチズムへ 著者:小俣和一郎 価格:2300円 |
目次 |
第一章 問題意識 :一 これまでの精神医学史 二 一つのフーコー批判
三 近代精神医学の成立が意味するもの |
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小俣和一郎 おまた わいちろう 拘禁施設に鎖でつながれていた近代以前の精神病者が、フランス革命期の有名なピネルの「鎖からの解放」で自由を取り戻し、より人道的な精神病院施設が発展してゆく。これに異を唱えたのがフーコーである。近代精神医学の誕生をめぐるさまざまな言説は、現代の精神病理や社会病理を考えるうえで、いまなお基本的な視軸を提供している。近世以前の精神病者は本当に自由闊達な社会的存在だったのか。「鎖からの解放」は本当にあったのか。それは史実として検証できるのか。精神病者の処遇をめぐる今日の社会的問題と深く直結した重要な歴史的出来事を検証しつつ、近代精神医学の生み出した変質学説や脳病論などがナチズム期の強制断種や「安楽死」犯罪へと尖鋭化していったことなどを含め、18世紀末から20世紀前半までの主にヨーロッパの精神医学の歴史的意義を、従来ほとんど触れられなかった一般社会、政治、宗教史との関わりから論じたパイオニア的著作。 |