書名:
フランス植民地主義の歴史
     奴隷制廃止から植民地帝国の崩壊まで

著者:平野千果子

価格:2800円
サイズ:
四六判上製 360ページ 刊行日2002年1月 
ISBN978-4-409-51049-0 (専門/歴史)

                                                 内容紹介欄へ

目次
序・なぜフランスの植民地かワールド・カップの優勝チーム/歴史的事件を祝う/奴隷制と植民地/「オリエンタリズム」から思うこと/植民地の歴史から等身大のフランスへ/二つの植民地帝国

第一章 奴隷制廃止と「文明化」
1 奴隷制廃止前史:フランス革命と奴隷制/奴隷貿易の廃止/奴隷制廃止への議論
2 ヴィクトル・シュルシェール:革命の遺産の継承者/「文明化」の「浄化」と共和主義/有色自由人
3 「文明」から植民地主義へ:「文明」と「文明化」/ナポレオンのエジプト遠征/「文明化」から植民地主義へ
4 同化主義について:同化の虚と実/「シュルシェール主義」

第二章 カリブ海からアルジェリアへ――イスマイル・ユルバンを通して
1 奴隷の血筋:アイデンティティの模索/混血について/東と西の融合
2 イスラム教への改宗:エジプト体験/フランスのイスラム観/アルジェリア経験
3 アルジェリア政策とその現実:「アルジェリア人のためのアルジェリア」/現実のアルジェリア―「アラブ王国」構想/引き裂かれたユルバン

第三章 帝国主義の時代
1 ジュール・フェリーと植民地帝国:「植民地の建設者」フェリー/「優れた民族」と「劣った民俗」/二つの復讐
2 植民地拡張の「制度化」:地理学協会/「文明化」とキリスト教化
3 現地人と入植者:植民地住民へのまなざし/「新しいアルザス」/入植者たち
4 植民地帝国の建設と「帝国意識」:領土の拡張と植民地政策/モロッコ事件と「帝国意識」

第四章 「危機の二〇年」の諸相
1 「文明化」の変貌:「ヨーロッパ人意識」の勃興/植民地支持の広がり/「強制された同化」/「非文明化」あるいは「文明からの逃避」
2 反植民地主義の系譜:言葉の起こり/反植民地主義の限界
3 フランス植民地の鳥瞰:「フランスへの道は反フランスへの道」か―インドシナ/『ペペ・ル・モコ』―北アフリカ/「進化したもの」―ブラックアフリカ/シュルシェールの息子たち―カリブ海

終章「オクシデンタリズム」を問う
1 戦後の歩み:第二次世界大戦とフランス植民地/「フランス連合」と植民地独立戦争/「植民地帝国」の崩壊
2 「オクシデンタリズム」を越えて:植民地史の問い直し/「人道に対する罪」/「精神の征服」/ネグリチュードからクレオールへ

あとがき/注/関連年表/主要参考文献


著者・内容紹介

平野千果子 ひらの ちかこ
1958年東京生まれ。1981年上智大学外国語学部卒。パリ政治学院、パリ第一大学に留学。鈴鹿国際大学助教授を経て2001年から武蔵大学人文学部助教授。
主要著訳書:『世紀転換期における国際秩序の形成と国民文化の変容』(共著、柏書房)、『普遍性か差異か』(共著、藤原書店)、X・ヤコノ『フランス植民地帝国の歴史』(白水社)、L・ハント『フランス革命の家族ロマンス』(共訳、平凡社)、M・ドルーアン編『ドレフュス事件事典』(共訳、藤原書店近刊)など。


1848年の奴隷制度廃止は、その後のフランス帝国の植民地拡大への出発点でもあった。植民地化は後進国の「文明化」であって善であり、奴隷制は「文明の恥」=悪であった。以後フランスは、この論理に立って、アルジェリア、西アフリカ、インドシナ、カリブ海諸島の近代的な経営に乗り出していく。フランスのこのような植民地観 は、第二次大戦後の、アルジェリアとベトナム独立戦争に直面して動揺するが、払拭されることはなかった。フランス植民地主義は、ポストコロニアルの現代世界に深刻な影を投げている。本書は、従来イギリスの植民地主義の後ろにあって目立たなかった、フランスの植民地主義の全体像をはじめて捉え、オリエンタリズムの本質が具体的に明らかにされる。文章は読みやすく、図版も豊富。


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