書名:
植民地経験のゆくえ 
     
アリス・グリーンのサロンと世紀転換期の大英帝国

著者:井野瀬久美惠 

定価:5040円(本体価格4800円+税240円)
サイズ:A5判上製 474
ページ 刊行日2004年5月 
ISBN4-409-51052-5 (専門/イギリス近代史)

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目次
序  一枚の写真――メアリ・キングズリ/植民地経験のゆくえ――アリス・グリーン

第一章 帝国再考――植民地経験を問う意味
帝国への郷愁を超えるために:よみがえる植民地郷愁  男たちの物語から女たちの物語へ  レディ・トラヴェラー再考  母性帝国主義――白人フェミニズム批判  創られた白人生――アンナ・レオノーウェンスの場合  アングロ・アイリッシュと帝国/アイデンティティ・クライシスと帝国史の書き換え:ブリテンの死?  統合されない連合王国   ポコックの大西洋諸島史  アイデンティティとシティズンシップ――二つの世紀転換期/もうひとつのベクトル――植民地経験を問う意味:ミッション活動とミドルクラスの形成  選挙法改正と帝国  アリス・グリーン再考の意味――帝国とシティズンシップ  本書の構成

第二章 ロンドンのサロン文化
アリス・グリーンの伝記:甥の叔母物語  アイルランドからロンドンへ  サロン分析の資料/ケンジトン・スクェア 一四番地:「国民人名辞典」から  夫の友人たち――イングランド史家と出版者  夫の著作を管理する――サロンの基礎  イングランド史を叙述する  ウェッブ夫人が見たサロン/世紀転換期ロンドンのサロン:世紀転換期、女たちのサロン――例外としてのアリス・グリーン  ガートン・カレッジ校長 推挙問題  試行錯誤する自由党若手議員たち   ジョン・F・テイラーの存在  単著公刊の空白期  メアリとの出会い、ペアトリスとの訣別

第三章 インスピレーションとしてのメアリ・キングズリ
女性が旅行記を書くこと:メアリの人生と旅――その語り  フェミニズム歴史地理学の挑戦   知の生産と消費/メアリ・キングズリの旅:旅のルート  商売するメアリ――西アフリカ商人たち  帝国の緊張――マクドナルド総領事の登場  旅ルートの変更  オゴウェ川を描写する  淡水魚を収集する  「人喰い」と旅する  フェティッシュを観察する  文明社会への復帰/インスピレーションとしてのメアリ・キングズリ:女らしさという武器  ユーモアという鎧  「文明/野蛮」から「文明/文化」へ  三つのアフリカ人イメージを批判する  宣教師批判  メアリ最後の手紙  アフリカ人たちの反応――ブライデンとヘイフォード  メアリの死

第四章 メアリ・キングズリを追悼する――アフリカ協会の設立とその変質
五〇年後の記憶:西アフリカ支部設置計画  二通目の手紙  否定された追悼/アフリカ協会の設立:アリス・グリーンの設立趣意書  初期のメンバーたち  創立総会の不協和音――シェルフォードのアフリカ経験/アフリカ協会の変質:月例ディナーの成功  植民地行政官の社交クラブ化  危惧された本質  メアリの戻れ!  その後のアフリカ協会

第五章 女たちの南アフリカ戦争
記憶を奪いあう女性たち:メアリの旅立ち  フラーラ・ショウの投稿  失われた文章  横領された帝国主義  戦況変化と捕虜収容所の設置  メアリ・キングズリの到着/アリス・グリーンの捕虜収容所訪問日誌:セント・ヘレナ島デッドウッド・キャンプ  アリス・グリーンの到着と新たな戦況   捕虜収容所訪問日記  捕虜収容所という空間  監視する人びと  捕虜たちの多様性――ボーア人  ボーア人とオランダ人の境界線  外国人義勇兵の証言  「本物のボーア人」とのインタビュー  質疑応答のなかに見えてくるもの  新たな戦況があきらかにしたもの/捕虜収容所経験のゆくえ:収容所の記憶を創る  男らしさの喪失と回復  限界――ボーア人女性と黒人  南アフリカ戦争のなかのアイルランド人  アイルランド義勇兵たち――マクブライド隊  南アフリカはアイルランドである  その後のセント・ヘレナ島

第六章 アイルランド国民の「創造」――アイルランド史を書き換える
新しいイングランド史から新しいアイルランド史へ:シカゴからの依頼  ナショナリティという言葉  最初の構想  修正案  修正案の背景――シェラレオネとアイルランド  「新しいイングランド史」のゆくえ/中世アイルランド文明の発見:アイルランド 史の記憶と忘却  「形成と解体」の挑戦  ヨーロッパの例外としてのアイルランド  国民形成の文化力  ハイブリディティの意味――アングロ・アイリッシュ  部族制度への再評価/アイルランド国民はひとつ:ダンロップの批判  アリス・グリーンの反論  盲目の詩人は何を語るのか  論争の顛末  時代の変化と和解の可能性

結びにかえて――コモンウェルスへの道
南アフリカ経験の副産物  サロンに変化  帝国批判の集団として  カナダへの関心――ダーシィ・マギー再考  「諸国民のコモンウェルス」への道  サロンの危機  ポスト ・世紀転換期――ケイスメント事件を超えるために

注/あとがき/参考文献/人名索引  


著者・内容紹介

井野瀬 久美惠  いのせ くみえ
1958年愛知県生まれ。京都大学文学部英文科、西洋史学科(学士入学)卒業。京都大学大学院文学研究科(西洋史学専攻)博士課程単位取得退学。追手門学院大学文学部専任講師、甲南大学文学部助教授を経て、現在、甲南大学文学部教授。専攻:イギリス近現代史・大英帝国史。
主著:『大英帝国はミュージック・ホールから』(朝日新聞社、1990)、『子どもたちの大英帝国』(中公新書、1992、文庫版『フリーガント呼ばれた少年たち』1999)、『女たちの大英帝国』(講談社現代新書、1998)、『黒人王、白人王に謁見す』(山川出版社、2002)、『イギリス文化史入門』(編著、昭和堂、1993)、『植民地経験――人類学と歴史学からのアプローチ』(編著、人文書院、1999)、「ケンジントン・スクェア一四番地――アリス・グリーンとアフリカ協会」(『世紀転換期イギリスの人びと』人文書院、2000)、「表象の女性君主――ヴィクトリア女王を中心に」(『岩波講座 天皇と王権を考える 第7巻・ジェンダーと差別』岩波書店、2002)、「イギリスを創り直す――ブリテン、帝国、ヨーロッパ」(『歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティ』山川出版社、2003)など。


魅力的な女性像ともうひとつの「帝国」像を樹立

女性で初めて未知の西アフリカを探検し、貴重な情報をイギリス社会にもたらしたメアリ・キングズリと、「アフリカ協会」の設立者であるアリス・グリーン。世紀転換期のイギリスに生きた二人の女性の活躍―イギリス本国、アフリカ、アイルランドにまたがる植民地経験を詳細に追い、大英帝国の植民地政策の中に位置づける。アリス・グリーンについての膨大な新史料に基づき、もう一つの「帝国」像を樹立


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