書名:
加賀百万石と江戸芸術
          ―前田家の国際交流

著者:宮元健次

価格:1900円
サイズ:四六判並製 232
ページ 刊行日2002年1月 
ISBN4-409-52036-9 (一般教養/歴史)

                                                 内容紹介欄へ

目次
はじめに

序章 忍の一文字――百万石の外様大名――
1 初代前田藩主・利家:悲劇の武将/出生の謎/歌舞伎者・利家
2 信長と利家:槍が助けた信長との確執/四男の家督相続
3 秀吉と利家:親友・秀吉/ライバル秀吉/先を越された本能寺の変/秀吉と勝家の板ばさみ/聚楽第と京都屋敷
4 秀頼と利家:秀頼・秀次の娘の仲人/秀頼のもり役/利家隠居/秀頼の後見人
5 家康と利家:家康暗殺計画/利長の忍耐
6 家康と利長:利家の死/謀反の嫌疑とまつ/関ヶ原の戦い/利長の苦心
7 徳川幕府と利常:利家の四男/家康の猜疑/再び謀反の嫌疑
8 後水尾院と利常:利常の胸中/鼻毛・金玉大名/苦渋をなめた後水尾院/類似した人生/後水尾院の反骨/反骨の絆/寛永文化サロンのパトロン/加賀と金箔/加賀友禅/百万石文化の国際性

第一章 茶の湯――高山右近とキリスト教――
1 キリシタン大名・高山右近:生い立ち/清の病い/利家の保護/金沢城造営/右近の海外追放
2 加賀百万石とキリシタン:前田家とキリシタン/右近の教会建設/金沢・能登の教会
3 茶道とキリシタン:南蛮坊主/茶室と聖堂/茶道とミサ/国際港・堺と茶道/秀吉と西欧文化/利休とキリシタン(蒲生氏郷・瀬田掃部・牧村兵部・細川三斎・織田有楽・黒田如水・古田織部)/宣教師の布教方針と茶道/南蛮屏風の中の茶の湯/宣教師の見た「茶の湯」

第二章 庭園――兼六園と桂離宮――
1 小堀遠州と前田家:アートプロデューサー遠州/遠州の生い立ち/金沢城本丸茶室/兼六園/辰巳用水の謎/兵四郎=賢庭説
2 日本のレオナルド・ダヴィンチ:西欧技術を学んだ男/同時代のヨーロッパ庭園/日本への影響/遠州作の宮廷庭園(寛永度仙洞御所・寛永度内裏・女院御所・明正院御所)/宮廷付工人
3 桂離宮の作者:定説への疑問/パースペクティヴ/ヴィスタ(見通し線)/黄金比(黄金分割)/幾何学的配置/作者は遠州か/従来の遠州説/定説の根拠/反論/よき約束/その他の可能性
4 その他の遠州作品:江戸城二の丸庭園/南禅寺方丈庭園/大徳寺孤蓬庵/西欧好みの遠州

第三章 陶芸――古九谷とデルフト
1 古九谷の謎:いつどうやって造られたのか/古九谷発祥に関する史料/謎の後藤才次郎/古伊万里・古九谷同一説/伊万里焼とは/古九谷窯跡発掘/伊万里素地使用説
2 加賀藩と西欧陶芸:長崎御買物師/高嶋屋の活躍/デルフト発注/古九谷への影響
3 伊万里・古九谷とアールヌーヴォー:ヨーロッパの中国ブーム/ヨーロッパを魅了する/西欧芸術をリードする/アールヌーヴォーへの影響

第四章 漆芸――象嵌と蒔絵
1 漆芸とは:象嵌・蒔絵の技術/輪島塗
2 蒔絵:幸阿弥家と五十嵐家/五十嵐道甫/道甫の作品
3 前田藩細工所:工芸の基礎研究/「百工比照」/「百工比照」のルーツ/「百工比照」への西洋文様の影響
4 象嵌:後藤家の重用/加賀象嵌/京文化の影響
5 漆芸と国際交流:漆=ジャパン/南蛮漆芸と紅毛漆芸/反骨としての国際交流

終章 綺麗という美意識
1 「きれい」とは:美しいときれい/きれい発生の謎
2 八条宮家とキリシタン:智仁・智忠親王/八条宮の関係者/曼殊院
3 修学院離宮:西欧好みの後水尾院/西欧手法
4 寛永サロン文化と西欧:綺麗座敷/ルネサンス・バロックの美「きれい」/虚構としての「西欧」

おわりに

参考文献
 


著者・内容紹介

宮元健次 みやも とけんじ
1962年生まれ。1987年東京芸術大学美術研究科修了。現在、龍谷大学国際文化学部専任講師。 宮元建築研究所代表取締役。
主著:『桂離宮隠された三つの謎』『修学院離宮物語』『近世建築にひそむ西欧手法の謎「キリシタン建築」論序説』(彰国社)、『桂離宮ブルーノ・タクトは証言する』(鹿島出版会)、『桂離宮と日光東照宮―同根の異空間』『図説 日本庭園の見方』(学芸出版社)、『日本伝統美とヨーロッパ―南蛮美術の謎を解く―』(世界思想社) 、
『建築家秀吉―遺構から推理する戦術と建築・都市プラン』『江戸の陰陽師―天海のランドスケープデザイン』(人文書院)など。


当時最大の百万石を領しつつも、外様大名であった加賀前田藩。幕府の厳重な監視のもと、「けっして武器を取ることはありませんぞ」という幕府への態度表明のため、軍事費を極力抑え、財力のほとんどを文化政策に注いだという。その結果、江戸時代の芸術文化の発展に著しく貢献することになった。茶の湯とキリシタン大名、小堀遠州と兼六園ほかの庭園、古九谷などの陶芸、そして加賀工芸の粋である象嵌や蒔絵などの漆芸等々、前田家と当時の代表的なクリエーターたちとの数奇な交流を興味深く描く。『建築家秀吉』『江戸の陰陽師』に続く、著者が専門とする近世日本文化をめぐるフレッシュな切り口の歴史読物。


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