書名:
原万葉 葬られた古代史

著者: 安引 宏

価格:2300円
サイズ:46判上製 243
ページ 刊行日2002年9月 
ISBN4-409-52037-7 (一般・教養/歴史・日本古代史、古典・評論)

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目次
はじめに――叙事詩劇、千三百年の長い眠り

第一部 聖書「原万葉』誕生の前夜
初めてこの世に「日本」が現れたとき/六八九年四月十三日、飛鳥浄御原宮/海月(くらげ)なす国、漂える王権/夏、真弓の岡なる日並皇子尊(ひなみしのみこのみこと)の殯宮(あらきのみや)/「いにしへも しかにあれこそ」/六九二年三月三日、ふたたび浄御原宮にて

第二部 聖歌劇「日本賛歌」の復原
新たなる国、新たなる王権――倭国から日本へ、大王(おおきみ)から天皇(すめらぎ)へ/忍び寄る動乱――天皇霊に乱れが生じるとき/迫り来る内戦――大和心と漢心(からごころ)の争い/壬申の乱の収束――魂鎮めと魂振りと/ユートピアの幻想――天皇教(スメロギズム)の誕生/聖歌劇の構造――「日本賛歌」の復原

第三部 聖史詩劇「原万葉」の埋葬、あるいは歴史の復讐
縁起の歌群のひそかな告発/「ひむがしの 野に炎(かぎろひ)の」/六九五年一月十六日、新都藤原京踏歌(たふか)の節会(せちえ)――言霊の歌から儀礼の歌へ/すりかえられた神学、あるいは天皇制の成立/石見(いわみ)鴨山のほうへ/エニグマ、あるいは二つの葬(はふ)り

あとがきに代えて――精神の巨大古墳の発掘を、さらに


著者・内容紹介

安引 宏 あびき ひろし

1933年生れ。東大英文化卒。「世界文学大系」「世界ノンフィクション全集」「展望」復刊編集、「すばる」創刊編集長をへて、再開第一回中公新人賞を受賞。文筆活動に入る。
小説:『死の舞踏』『インドの誘惑』『背教者』など。紀行:『カルカッタ大全』(人文書院、現在品切)、『新アルハンブラ物語』など。
訳書:V・S・ナイポール『インド・闇の領域』(人文書院)、アラン・ド・ボトン『哲学のなぐさめ』など。


七世紀末から十世紀にかけて七次にわたる編集を経た万葉集。その初発を原万葉という。万葉集の成立にあたって当時の為政者はそこに何を企んだか。それは単に素朴な古代詞華集ではなく、「日本」や「日本人」、さらに「天皇」なるものがいかにして成り立ったか、いわば日本国家成立に関わる明瞭なメッセージが窺えるのである。タブーの核心にかかわることを避け、歴史書として《精神の一大古墳》たるべき万葉集の上に意識的な沈黙、それ故の誤解、そして誤解につけこんだ意図的曲解をうずたかく降り積もらせてきた万葉学の怠惰の歴史に鋭い批判の矢を放ち、聖詩史劇としての万葉原初の構成を詳細に分析するとともに、そこにこめられた国家イデオロギー確立の経緯を初めて解きひらいた意欲的な取組み。同様主題を小説で展開した『背教者』(河出書房新社)がある。


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