書名:
隠れユダヤ教徒と隠れキリシタン

著者:小岸 昭

価格:2900円
サイズ:46判上製 382
ページ 刊行日2002年10月 
ISBN4-409-52038-5 (一般・教養/歴史・思想)

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目次
 プロローグ 二つの「隠れ」信徒物語
  もう一つの「隠れ」/ デリダの中のマラーノ的精神 /方法論

第一草 加害の視点と向かい合う男
一枚の絵/要人テロ/痛みの分有/改俊の思想/危険な視点/出発

第二章 フランシスコ・ザビエルと異端審問
到着/スペイン、ボルトガルにおけるカトリックの恐怖政治/リスボン異端審問所での聖務/ゴア異端審問所設立の提言/加害の視点と向かい合う画家

第三章 マカオの海
加害の視点と向かい合う冒険商人/コロアネ島へ/改俊のマラーノ/マラーノ的二重性の誕生/廃墟は語る/『デ・サンデ天正遣欧使節記』の見えざる世界/天正少年遣欧使節たちの棄教・追放・殉教

第四章 棄教者沢野忠庵の「マラーノ性」
いま何故フェレイラか/棄教/長崎西勝寺の「南蛮転び伴天連忠庵」/フェレイラの棄教を償う殉教者たちの無残/ クリストヴァン・フェレイラの出自/沢野忠庵の先達としての不干斎ファビアン/沢野忠庵の『顕偽録』/ロゴス中心主義批判と『顕偽録』の加害の視点/ルビノ第二団と通事沢野忠庵の対決/日本近代科学への寄与――『乾坤弁説』と『南蛮流外科秘伝書/クリストヴァン・フェレイラの「マラーノ的特徴」  第

五章 辣を生きる人々  
隠れ信徒の発見/早通ぎた復活/浦上キリシタンの「旅」/大村から生月島へ/生月の「最後のマラーノ』上映/文学としての外海/玉之蒲のマリア観音/五島の隠れキリシタン/

六章 アルメー様は何処に居る
『都宗門』の国天草へ/アルメイダと西洋医学/アルメイダの布教の旅と医療行為/アルメイダの天草布教/天草隠れキリシタンの露顕/キリシタン裁許の後にきたもの/反キリスト教の予兆/再び「切支丹でうす」の町マカオへ /同君連合とその余波/アルメイダ終焉の地から

エピローグ 「非・場」からのロゴス中心主義批判
暗夜を照らすランプの灯/暗夜のオラショ/マラーノ的精神の体現者と隠れキリシタン精神の体現者                                                     

あとがきに代えて――新たな想像力に向けて

   注  人名索引  


著者・内容紹介

小岸 昭 こぎし あきら

1937年北海道生。1963年京都大学独文科修士課程修了。2001年京都大学総合人間学部定年退職。現在北海道江別市在住。
ドイツ文学専攻。ユダヤ思想研究を軸として、スペイン、ポルトガル、インド、イスラエル、ブラジルなどを旅し、ディアスポラ・ユダヤ人の足跡を追求している。1995年「日本・ユダヤ文化研究会」創設。
著書:『スペインを追われたユダヤ人』(人文書院、筑摩学芸文庫)、『マラーノの系譜』(みすず書房)、『十字架とダビデの星』、『離散するユダヤ人』(岩波書店)、『世俗宗教としてのナチズム』(筑摩文庫)、『ファシズムの想像力』(人文書院)
訳書:ヨベル『スピノザ異端の系譜』(共訳、人文書院)、デッシャー『水晶の夜』(人文書院)他。


アルメイダ=マラーノを軸に「隠れの思想」を追究した力作。

 カトリックの普遍主義によって迫害され改宗を迫られたスペイン・ポルトガルのユダヤ人=マラーノの運命と、日本でキリスト教の布教や医療に活躍したイエズス会の改宗ユダヤ人アルメイダ、棄教者フェレイラ(沢野忠庵)、さらに拷問による棄教を拒否した隠れキリシタンの運命とを重ねて考察し、両者に通じる内在の思想、隠れの思想に近代の可能性を読みとる。リスボン、ゴア、マカオ、長崎、生月島、五島、天草などキリシタンゆかりの土地に実際に足を運んで生まれた想念と、現実の歴史の出来事が妖しく交錯する。隠れキリシタンを全く新しい角度から捉え、近代史を読み替えた本書に、読者は強い衝撃を受けるだろう。前著『スペインを追われたユダヤ人』の日本篇。


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