書名:
現代台湾宗教の諸相――台湾漢族に関する文化人類学的研究

著者: 五十嵐真子

定価:3990円 (本体価格3800円+税190円)
サイズ:A5判上製 248
ページ 刊行日2006年2月 
ISBN4-409-53034-8(専門学術書/文化人類学)

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目次

序論
第一章 台湾漢族社会の構成
第一節 台湾社会の民族構成/第二節 漢族の社会組織の特徴…系譜集団「宗族」の性質/宗族の規模の多様性とその要因―フリードマン・モデルの検討/「家」をめぐる研究と系譜モデル/「家」と女性―妻と母親の役割/まとめ

第二章 漢族の宗教世界観
第一節 台湾の宗教状況…人々の信仰する神々/人々と神々を媒介するもの/漢族の民俗宗教/第二節 死をめぐる祭祀と世界観…漢族の死者祭祀―死者から祖先へ/腐敗する肉の危険性と「気」を媒介する骨/汚れ・女性・豊饒性/第三節 空間認識と民俗宗教…風水知識の世界/漢族の伝統的住居/住居と風水―台湾の場合/土地公信仰にみる自然観/まとめ

第三章 変化の中の民間信仰
第一節 王母娘娘祭祀集団J宮の事例…J宮における祭祀/台湾における童乩信仰/童乩信仰と教典的知識/王娘娘信仰と漢族の「伝統」/まとめ/第二節 戦後台湾の民間信仰…神々の変化/信仰形態の変化/「鸞堂」とは/台湾の恩主公信仰/儒宗神教の発展/慈恵堂/戦後の台湾と宗教

第四章 宗教知識の再解釈
第一節 大日如来道場…Y氏と大日如来道場/「修験者」と「霊能者」/漢族の伝統とのかかわり/伝統宗教への再解釈/第二節 霊仙眞佛宗…霊仙眞佛宗の宗教と組織/慮勝彦の宗教体験/第三節 新しい信仰を生み出す背景―外来宗教と社会変化…キリスト教/大陸起源の民衆宗教/新興宗教/社会変化との関係/台湾社会のグローバル化

第五章 植民地経験と宗教の変化
第一節 改革的な仏教団体…台湾仏教概史/改革的仏教団体/第二節 佛光山にみる仏教の現代化…星雲大師と佛光山/仏教の教養化/二つの仏舎利来代―仏教のスペクタル化/台湾社会と仏教―「中国」との関わり/まとめ/第三節 日本仏教との関係…佛光山の成立基盤/宣蘭念仏会と星雲大師/佛光山の戦略

結論

あとがき/引用文献/索引(人名・事項)


著者・内容紹介

五十嵐真子 いがらし まさこ
1965年名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科文化人類学専攻博士後期課程満期退学。1994‐2000年、野外民族博物館リトルワールド研究員を経て2000年より神戸学院大学人文学部人間行動学科助教授。2005年3月 博士(人間文化学)授与(神戸学院大学人間文化学研究科)
主著・論文:『アジア移民のエスニシティ』(共著,風響社,2001年)、「現代台湾社会における仏教の新展開―佛光山を例に―」(『宗教と社会』第10号,2004年)


漢族の現代宗教とその文化人類学的意義 フィールドワークの貴重な成果

「王母娘娘」祭祀集団、「大日如来道場」「霊仙眞佛宗」「佛光山」など、台湾独自の民間信仰、土着信仰、民衆教団には、親族組織、社会組織、規範、儀礼、世界観、居住空間、建築、芸能に至るまでさまざまな局面に宗教が深く浸透し、それらが有機的につながることで社会の統合と整合性を成り立たせている、文化人類学的に見て興味深い諸相がうかがえる。台湾漢族社会の構成や宗教、世界観を概観し、伝統宗教の変遷と現代宗教の実態や特色を探るとともに、植民地経験や日本仏教との関わり、宗教の現代化まで踏み込んだ意欲の研究。


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