書名:
失語症を解く
     言語聴覚士が語ることばと脳の不思議

著者:関 啓子

価格:2000円
サイズ:
202ページ 刊行日2003年5月 
ISBN4-409-94003-1 (一般・教養/医学・リハビリテーション)

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目次

第1章宇宙語を話す患者さん:私の人生を変えた人/でも,なぜ?/ノーソンショウ

第2章 三年後の中村さん:失語症は治るのか?/究極の言い間違い/「朱鷺」と「土器」は同じ?/障害の不可視性

第3章名を捨てて実をとる:サイフオトシタカネオクレ/気がつけば外国人/右脳の活用法

第4章十人十色:キーワード法/コブタヌキツネコ/文章を組み立てること,理解すること/不要は無用

第5章 この一言が私のすべて:「おはよう」/弘子さんの主張/より良いコミュニケーションのために/手と脳の不思議な関係

第6章 言葉の引き出しが見つからない:高橋でした!/ことば探し/手足は動くが復職できない/辞書はボクの愛読書

第7章  ウソのようなホントの話:これは現実だ/引きこもり,そして再起/もう一度輝くために/障害受容

第8章 失語があると半人前?:誤解されて/言葉を使わずに思考する/失語症の評価/話し言葉のチェックポイント/読み書きそろばん/忘れられないできごと

第9章 一度あることは二度ある:弁論部キャプテン/楽しく食べたい/コミュニケーションとは/言語の機能5 言語運用

10章 失語症とともに生きる:ムカデのダンス/言語聴覚士のこと/障害とともに生きる


著者・内容紹介

関 啓子 せき けいこ
1952年東京生れ。神戸大学医学部保健学科教授。医学博士。言語聴覚士。専門は神経心理学。1976年国際基督教大学(ICU)教養学部語学学科卒業、東京銀行(現東京三菱銀行)に入行。5年の勤務の後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院入学。1982年同卒業。東京都神経科学総合研究所ほかを経て現職。日本神経心理学会評議員、日本高次脳機能障害学会(旧失語症学会)評議員、日本言語聴覚士協会学術部員などのほか日本リハビリテーション医学会、日本職業・災害医学会などに所属。
主著(全て共著):『右半球の神経心理学』(朝倉書店、1991)、『言語聴覚士指定講習会テキスト』(医歯薬出版、2001)『言語聴覚障害学基礎・臨床』(新興医学出版社、1986)など。標準化に関与した検査『WBA失語症検査』(医学書院、1986)、『BIT行動性無視検査』(新興医学出版社、1999)
訳書(全て共訳):M.S. Gazzaniga 『社会的脳』(青土社、1987)、K.M.Heilmanら編 『臨床神経心理学』(朝倉書店、1995)など。


 宇宙語?で会話を続ける人。自分の書いた字が読めない?!ことばが出てこない!にわかには信じ難いさまざま症状。これが、脳梗塞やクモ膜下出血などの脳障害、交通事故などによる脳損傷が原因となっておこる言語障害、失語症の一例である。患者の数は多いにもかかわらず、実態についてこれまであまり知られていない。メンタルの問題、あるいはその症状を、痴呆や精神遅延、怠けであるなどと誤解されることも少なくない。この本では、周囲の誤解ゆえに苦しむ患者とその家族の気持によりそいながら、そのメカニズムと克服(リハビリ)の取り組みをやさしい語り口で説く。失語症の衝撃と研究への決意にはじまり、妻であり母である著者が、さまざまな患者と出会いながら続けてきた研究と言語聴覚士という仕事の重要さ楽しさが語られる。脳損傷は、いつでも誰にでも起こり得るということ、そして失語症とともに生きていく患者の姿から、「障害」との向き合い方を考えさせられる。また、失語という現象をとおして、人間の脳と認知の仕組み、視覚や聴覚など感覚器官の不思議な関係にも興味が広げられる。

今後言語聴覚士の資格取得をめざす人。脳神経学・医学一般を学ぶ学生。脳損傷の後遺症に悩む人、その家族のほか、介護や看護に携わる人は必見。著者は神戸大学医学部教授、言語聴覚士。


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