書名:〈病〉のスペクタクル――生権力の政治学

著者:美馬達哉

定価:2520円 (本体価格2400円+税120円)
サイズ:四六判上製 
260ページ 刊行日2007年5月 
ISBN978-4-409-04086-7 (現代思想・批評/医学生物学・政治社会学)

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目次

まえがき

T 〈感染〉の政治学
第一章 アウトブレイクの社会的効用――SARS:政治的ウィルス/SARS患者は存在しない/疾病論の言語学的転回/非典型的肺炎からSARSへ――感染症患者とは誰か?/〈感染書患者〉の汚名にまみれた肖像/新たな身体のテクノロジー/感染症のスペクタクル/第二章 防疫線上の政治学――鳥インフルエンザ:ウィルスと政治のとの出会い/鳥インフルエンザとは/鳥インフルエンザから新型インフルエンザへ/「予防」の上昇/監視の動物化/人間・動物・防疫線/第三章 グローバルエイズの政治経済学:医薬品アクセス問題/南アフリカ共和国政府対ビッグファーマ/エイズアクティヴィズムのグローバリゼーション/知的所有権と「新しい保護主義」とは何か/知的所有権とWTO/ゆらぐガヴァナンス

U 〈生〉のディスクール
第四章 〈生〉のテクノスケープ――ES細胞をつらぬく権力:人と細胞/ヒーラ細胞のポリティクス/ベンヤミンからフーコーへ/生権力のあいまいな対話/ES細胞と何か/ES細胞と胚の地位/アメリカ合衆国におけるヒト胚研究の「禁止」/脱国家化される医学研究/生殖技術とヒト胚の保護/「人間の尊厳」と「人体の尊厳」/第五章 「脳死」の神話学:慎重論の二つの類型/シニフィアンとしての「脳死」/神話群としての「脳死』と臓器移植/「意味の四辺形」のねじれ/日本における「脳死」と臓器移植/「脳死」と臓器移植をめぐる二律背反(アンチノミー)/第六章 病者の高額――視覚化される脳:脳を視る/天文学とビートルズ/視覚化の変容/脳機能を聴く/ひき肉に気をつけろ/ブラックボックスを覗く/タン、タン/Ecce Homo

V 〈恐怖〉のイデオロギー
第七章 がん恐怖症:がんはなぜ「告知」なのか/特別の病気としてのがん/日米間の差異/アメリカにおけるがんの暗喩/がんのフェティシズム/イデオロギーとしての近代医学/第八章 ストレスの政治学:ストレスとは何か/ストレスの心理学化/首尾一貫感覚とタイプA/病気の自己責任論

あとがきにかえて アウシュヴィッツの「回教徒」
 


著者・内容紹介

美馬達哉 みま たつや
1966年大阪生まれ。京都大学大学院医学研究科博士課程修了。現在、京都大学医学研究科助手(高次脳機能総合研究センター)。臨床脳生理学、医療社会学、医療人類学。
論文に、「生かさないことの現象学 安楽死をめぐって」(萩野美穂編『資源としての身体』岩波書佑、2006年)、「要塞と緋文字 メーガソ法をめぐって」(上野加代子編『児童虐待のポリテイクス』明石書店、2006年)、「リスク社会論の視座 脳から社会へ」(青井倫一・竹谷仁宏編『企業のリスクマネジメソト』慶應義塾大学出版会、2005年)、「バイオポリテイクスの理論に向けて」(大阪市立大学『経済学雑誌』2004年春号〕、「身体のテクノロジーとリスク管理」(山之内靖・酒井直樹編『総力戦体制からグローバリゼーショソヘ』平凡社、2003年)、「史的システムとしての近代医療」(黒田浩一郎編『医療社会学のフロンティア』世界思想社、2001年〕、「軍国主義時代 福祉国家の起源」〔佐藤純一・黒田浩一郎編『医療神話の礼全学』世界思想社、1998年)など。


気鋭によるバイオポリティクスの清新な分析

世界を妖怪が徘徊している、〈病〉という妖怪が…。SARS、鳥インフルエンザ、AIDS、ES細胞、脳死、がん、ストレス…。〈生〉を貫き強力に作動する政治力学、恐怖と予防を上昇させネオリベラリズムとも共鳴するその力の本質とは何か。医学生物学と政治社会学を横断する、画期的分析の誕生。『現代思想』掲載論文など8本の論考を収める。著者、初の単著。


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