書名:宋学の西遷 ―近代啓蒙への道―

著者:井川義次

定価:8190円 (本体価格7800円+税390円)
サイズ:A5判上製 
536ページ 初版刊行日2009年12月 
ISBN
978-4-409-04100-0 (思想)

目次

序章

第一部 クプレ『中国の哲学者孔子』の中国哲学観
 
第一章 『中国の哲学者孔子』「序説」について
 はじめに
 第一節 真なる神と理性の光
 第二節 張居正―クプレの古典理解のメルクマール―
 第三節 『易』解釈―「謙」卦をめぐる有神論性の主張―
第二章『中国の哲学者孔子』の儒教古典解釈
 はじめに
 第一節 理性・博愛・最高善―『大学』の三綱領の翻訳―
 第二節 平天下と理性―『大学』の八條目―
 第三節 性理と理性―『中庸』の「天命」と「性」―
 第四節 「霊」の実在―『中庸』の鬼神―
 第五節 理性認識の書―クプレの『論語』解釈―

第二部 ノエル『中華帝国の六古典』の儒教倫理称揚
.  
第三章 『中華帝国の六古典』の儒教古典解釈(T)
 はじめに
 第一節 ノエルと『大学』―朱子学の受容と解釈―
 第二節 物理と知性を貫くRatio―「格物補伝」―
 第三節 理性と天命
第四章『中華帝国の六古典』の儒教古典解釈(U)
 はじめに
 第一節 天道と死―『論語』をめぐって―
 第二節 性善と民本と革命と―『孟子』をめぐって―
 第三節 「孝」の宇宙論―『孝経』をめぐって―

第三部 ヴォルフ――ヨーロッパ啓蒙への儒教のインパクト

第五章 『中国実践哲学講演』(T)
 はじめに  
 第一節 ヴォルフと中国哲学の周辺
 第二節 ヴォルフの孔子評価
 第三節 ヴォルフの「天」―脱宗教的宇宙法則―
 第四節 中国哲学の原理―試金石
第六章 『中国実践哲学講演』(U)
 第一節 『大学』
 第二節 実践哲学の実例としての中国
 第三節 日新の工夫―不断の前進―
 第四節 最高善か完成か―継続の優位―
 第五節 ヴォルフの見る中国哲学の宇宙構造論

終章
 
あとがき


著者紹介

井川義次(いがわ・よしつぐ)
1961年東京生まれ。筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程修了。琉球大学文学部人間科学科教授を経て、現在、筑波大学人文社会科学研究科哲学・思想教授。中国哲学専攻。博士( 文学)。主な論文に「十七世紀イエズス会士の『易』解釈――『中国の哲学者孔子』の「謙」卦をめぐる有神論性の主張」(日本中国学会『日本中国学会報』第48集、1996年10月)(日本中国学会賞哲学部門受賞)、訳書にM・ カルタンマルク『老子と道教』(共訳、2001年、人文書院)など。


内容紹介

ヨーロッパ近代啓蒙思想に刻印された宋明理学

16世紀から18世紀にかけてのイエズス会士による中国思想情報は、近代ヨーロッパ理性の形成においてきわめて大きな役割をはたしていた。本書では、ルイ14世の後押しをうけた宣教師クプレ、人文主義者ノエルによる儒教文献のラテン語訳を、中国語原典と丹念に照らし合わせて実証する。実は、宋明の儒教のうちには、神の「要請」なしに理性の自律的な純粋作用が存立しうること、当時ドイツ啓蒙のリーダーであったヴォルフの理想に照応しうる理念が、先在・潜在していた。さらに彼はフリードリッヒ大王から敬意をうけ、ライプニッツとカントをつなぐ人物でもあった。中国思想に影響をうけたヴォルフの哲学は、啓蒙理性の時代の知識人に広く感染流行し、近代啓蒙のプロトタイプとなる。儒教思想のヨーロッパ受容を、厳密なテクストクリティークによって検証する労作。


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