書名:翻訳と雑神 ―ドゥルシネーア白

著者:四方田犬彦

定価:2100円 (本体価格2000円+税100円)
サイズ:四六判上製 
225ページ 刊行日2007年12月 
ISBN978-4-409-16092-3 (教養書/文学評論)

  

目次

西脇順三郎と完全言語の夢/金素雲の朝鮮民謡翻訳/金時鐘による金素雲『朝鮮詩集』再訳/吉増剛造 発語と彷徨/吉増剛造と雑神
後記


著者・内容紹介

四方田 犬彦 よもた いぬひこ
1953年生。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文化を学ぶ。韓国の建国大学校、中央大学校、テルアヴィヴ大学などで客員教師を勤める。現在は明治学院大学教授として映画史を講じる。映画と文学を中心、音楽、漫画、料理、都市論と多様な分野で批評活動を行なう。著書に本書の姉妹書『日本のマラーノ文学』のほか、『先生とわたし』、『摩滅の賦』、『見ることの塩』、『日本映画史百年』、『モロッコ流謫』(伊藤整文学賞)、『映画史への招待』(サントリー学芸賞)、『ソウルの風景』(日本エッセイストクラブ賞)など多数。詩集に『人生の乞食』、訳書にサイード『パレスチナに帰る』、ダルウィーシュ『壁に描く』などがある。


翻訳に駆り立てるものは何か ―他者に身を窶すこと―

姉妹書『日本のマラーノ文学』同様、豚=マラーノを基点に、マラーノ性と裏腹にある広義の翻訳実践の問題を本書は扱っていく。たとえば、『朝鮮民謡集』(岩波文庫)で知られる金素雲。彼は民族の言語が消滅することを憂い、民族の詩情を後世に残さんがために己の創作を放棄し、民話・民謡蒐集とその翻訳に生涯をかけた。いわば二重の意味で出自を詐称した行為であり、ある時期まで祖国韓国で売国奴と罵られたが、その翻訳の中身は驚くべきものであった。また、それを再訳する金時鐘(岩波書店近刊)の実践。これらに通底する翻訳者の使命/熱情を西脇順三郎や吉増剛造などの仕事とつなげ、アイデンティティと他者性の問題に鋭く切り込む。


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