書名:日系人の経験と国際移動――在外日本人・移民の近現代史

者: 米山裕/河原典史

定価:2625円 (本体価格2500円+税125円)
サイズ:四六判並製 282
ページ 刊行日2007年3月 
ISBN978-4-409-23042-8 (社会/日系人・移民問題)

目次

環太平洋地域における日本人の移動性を再発見する1 日本人の海外経験/2 本書の構成/3 新しい移民研究の方向性   米山 裕

T 移動とエスニシティ
二つのジャパニーズ――移動とエスニシティの現代社会論に向けて:1 アメリカにおける「ジャパニーズ」―二つの様式/2 日系エスニシティ、ナショナリズム、トランスナショナリズム/3 在米日本人長期滞在者にとってのホームランド/4 個人化する「ジャパニーズ」/5 縦軸と横軸が交わるとき  南川文里/選択的・戦略的エスニシティ――和太鼓と北米日系人コミュニティの再創造/再想像:1 脱本質主義のエスニシティ論/2 「創られた伝統」としての和太鼓/3 土地と歴史を取り戻す運動―デイアスポラと太鼓/4 フエージョンとハイブリッドな音楽/5 「東洋の淑女」イメージへのアンチテーゼ/6 太鼓に秘められた政治的メッセージ/7 多文化主義(マルチカルチュラリズムと太鼓/8 エスニック・アイデンティティとコミュニティ創造のツールとしての太鼓  和泉真澄

U 経験の焦点としてのハワイ
ハワイ日系二世のアイデンティティと政泊参加
―― 一九二〇年代から一九三〇年代の指導者たち:1 ハワイ日系社会と理想的二世像/2 「一〇〇%了メリカニズム」と「太平洋の架け橋」を掲げて―日系市民協会のケース/3 生きながらえた「太平洋の架け橋」―坂本正雄のケース/4 日系二世のアメリカ化の複雑性―まとめにかえて  物部ひろみ/ハワイ日系コミュニティにおける日本映画の経験1 ハワイの初期日本映画上映と弁士/2 ハワイにおける日本映画の輸入・配給ビジネス/3 日本映画館の台頭/4 ハワイ日系コミュニティにおける日本映画の記憶  権藤千恵/ハワイの越境日本人・日系人野球とアイデンティティ―― 一人九〇年代から一九二〇年代までを中心に:1 ハワイ野球の黎明期/                                                                                                                                                                                                                                                                                         2 ハワイ日本人野球の創成期/3 ハワイの日系アメ勺力人野球リーグの誕生と拡大/4 日米野球交流の隆盛とハワイ  清水さゆり

V 漁業と漁民の国際移動
カナダ・バンクーバー島西岸への日本人漁業者の二次移住――クレヨコツト・トフィーノ・バムフィールドを中心に:l カナダ日本人漁業史の再検討/2 バンクーバー島西岸への移住/3 トフィーノへの移住/4 バムフィールドの日本人漁業者/5 出身地と移住先Tおわりにかえて  河原典史/漁業移民の社会的関係性―― 一九三〇年代アメリカ・メキシコ国境海域の漁業活動から:l メキシコ海域における漁業と移民/2 日本水産資本の参入/3 メキシコの水産政策と共同漁業の活動/4 日本の軍事政策による外交的緊張の高まりのもとで/5 日本水産資本の撤退  杉山 茂

W 朝軒と日本人の移動
朝鮮における日本人農業移民――東洋拓殖と不二農村の事例を中心として:1 朝鮮への日本人農業移民/2 東洋拓殖による農業移民/3 水利王・藤井貫太郎/4 不二農村と日本人農業移民/5 国策と朝鮮移民  轟 博志/植民地朝鮮へ渡った軍需缶詰工場――竹中缶詰製造所の資料から:1 植民地への産業発展/2 軍需指定工場としての竹中缶詰製造所/3 朝鮮・済州分工場の活動/4 朝鮮での事業展開―おわりにかえて  河原典史

新しい移民史研究にむけて:1 日本人移民史の全体像を探る研究/2 移民史研究の課題―移住者の送出の構造/3 移民史研究の課題―安価な労働力移動の連鎖/4 移民史研究の課題―戦争協力 「国民になること」/「国民であること」/5 移民史研究の課題―還流

あとがき/索引/執筆者略歴


編者・内容紹介

米山 裕  よねやま ひろし
1959年生。カリフォルニア大学ロサンゼルス校歴史学部博士課程論文提出資格取得。文学修士。立命館大学文学部教授。専門はアメリカ史,日系移民史。戦前の日本人移民社会について関心がある。
「アメリカ史記述の越境化と日本人の国際移動――移民史の枠組みの解体と再構築に向けて」(『立命館文学』第597号,2007年2月),西川長夫,姜尚中,西成彦編『20世紀をいかに越えるか――多言語・多文化主義を手がかりにして』(共著,平凡社,2000年)など。

河原 典史  かわはら のりふみ
1963年生。立命舘大学文学研究科地理学専攻博士後期課程単位取得退学。文学修士。立命舘大学文学部助教授。専門は歴史地理学。近代日本と朝鮮・台湾・カナダへの漁業者の移動について関心がある。
高木正朗編『空間と移動の歴史地理』(共著 立命舘大学地域情報研究センター,2001年),平岡昭利編『離島の地理』(共著,海青社,2003年),「第二次世界大戦以前のカナダ西岸における日系造船業の展開――和歌山県出身の船大工のライフヒストリーから」(『立命館言語文化研究』第17巻1号,2005年)など。


「日系人」から「越境日本人」へ。グローバル化時代の日本研究

「移動」を中心概念として、近代から現代にかけての日本人の海外労働・生活体験を再評価する。殖民、海外赴任、移民などはばひろく扱い、移民・海外移住者を異質化することなく、またその主体性に注目する。日系人の同化に焦点をおいた移民研究や、移住者を生んだ地域の特殊性を調査する出移民研究、そして移住者を日本帝国主義の客体としてあつかいがちの植民地研究から脱する、地理学、社会学、歴史学の立場からの総合的アプローチである。


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