書名:中世の狂気 ― 十一〜十三世紀 ―

著者:ミュリエル・ラアリー
監訳:濱中淑彦

定価:6720円 (本体価格6400円+税320円)
サイズ:A5判上製 
440ページ 初版刊行日2010年1月 
ISBN
978-4-409-51063-6 (歴史)
目次

序(ジャック・ル=ゴフ)

序論

  第一部 狂気の宇宙

サタンと神の間―超自然的狂気の永続と変化(十一〜十三世紀)

第一章 悪魔の犠牲者と悪魔の味方(一)狂気の悪魔化

A 憑依れた者たち(悪霊憑き) 1憑依の原因 2憑依の様式 3解釈
B 悪魔の他の犠牲者たち
C 魔法使いたち 1伝統的な魔術師たち 2悪魔に仕える魔法使いたち(十二〜十三世紀)

第二章 悪魔の犠牲者と悪魔の味方(二)狂気の道徳化

A 無信仰の者たち 1無神論者 2ユダヤ人たち
B その他の罪人たち 1図像と世俗語の文学(十二〜十三世紀) 2神学の立場(十三世紀)

第三章 天から遣わされた人々

A 精神の単純な人々
B 偽りの予言者と偽りのメシア
C 神の狂人達たち……狂気の聖化 1一般的外観、聖なる狂気の起源 2十一世紀における神の狂人たち 3聖なる狂気の文学における復活〔十二〜十三世紀) 4神の狂人たちの生活(十二〜十三世紀) (a)神の探求 (b)キリストとの同化 (c)神秘状態と恩寵 5詩篇五二の図像における神の狂人たち(十三世紀)

人間と野獣の間に――自然的狂気の出現(十二〜十三世紀)

第四章 医学的省察の発展

A 病因論 1体液の均衡喪失 2情動障害 3さまざまな要因
B 疾病論 1フレネジー 2マニー 3メランコリー 4レタルジー

第五章 文学的及び図像的な紋切型表現の成功

A 狂乱型狂気の諸原因 1愛の傷心 2佯狂
B 「狂気の」人 1描写 2説明

  第二部 狂気に対する封建社会の態度

第六章 狂人に対する寛容と統合(一)癒し聖人頼み(十一〜十三世紀)

A 聖人の生前にもたらされる治癒
B 聖人の死後にもたらされる治癒 1主要な癒しの聖人たち 2その他の癒しの聖人たち 3治癒のための巡礼はどのように行なわれたか
C 癒しの総決算 1狂気の癒しが占める位置 2癒しの諸様態

第七章 狂人に対する寛容と統合(二)「自然的」手段(十二〜十三世紀)

A 医学的治療 1枠組み 2治療法:原資料 3薬剤 (a)鎮静剤(b)抗けいれん薬(c)強壮薬(d)吐瀉薬、下剤 4その他の治療法
B 愛 1ペルスヴァルの癒し 2イヴァンの癒し (a)隠行者との物々交換(b)侍女の介入 3アマダスの癒し

第八章 狂人の周縁化と排斥(十二〜十三世紀)

A 課せられた制限 1秘蹟を受けることの制限 2法的無能力
B 拒絶と排斥 1日常的な拒絶行動 2排斥と監禁 3 自殺、そして究極の排斥

第九章 狂気の取り込み

A 社会的政治的な取り込み:雇われた狂人 1類型 2職務 3狂気の政治化
B フォークロア的取り込み:愚者祭 1起源と全般的発展 2第一期:教会のなか (a)ろば祭 (b)その他の愚者祭 3第二期:街路にて 4意義

結語

訳者あとがき
図版説明
索引(地名・人名/事項)


監訳者・訳者紹介

濱中淑彦(はまなか・としひこ)
1933年生れ。精神医学。名古屋市立大学名誉教授、資生会八事病院顧問。著書『精神の科学』(共著、岩波書店、1983)、『臨床神経精神医学』(医学書院、1986)、『中世の医学』(シッパーゲス著、共訳、人文書院、1988)、『中世の患者』(シッパーゲス著、監訳、人文書院、1993)など。
川合一嘉(かわい・かずよし)1958年生れ。精神病理学。名古屋市立東部医療センター東市民病院精神科部長。著書『精神科診察診断学―エビデンスからナラティブへ』(共著、神庭重信・古川寿亮編、医学書院、2003)
金 吉晴(きん・よしはる)1958年生れ。精神医学。国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部部長。著書『心的トラウマの理解とケア』(編著、じほう、2005)
竹中吉見(たけなか・よしみ)1955年生れ。臨床精神医学。聖隷三方原病院精神科部長。著書『中世の患者』(同上、共訳)
武本一美(たけもと・かずみ)1958年生れ。精神病理学。京都大学保健管理センター准教授。著書「メランコリーの病前性格再考―他者との同一化の観点から」『臨床精神病理』第22巻第2号(星和書店、2001)
波多野和夫(はたの・かずお)1950年生れ。精神医学。佛教大学社会福祉学部教授。著書『言語聴覚士のための失語症学』(共著、医歯薬出版、2002)『中世の医学』『中世の患者』(同上、共訳)
山岸洋(やまぎし・ひろし)1958年生れ。精神医学。財団法人田附興風会医学研究所北野病院神経精神科部長。著書『中世の医学』『中世の患者』(同上、共訳)
山口俊郎(やまぐち・としろう)1941年生れ。児童精神医学。元京都女子大学教授。著書『子どもの生活世界のはじまり』(共著、ミネルヴァ書房、1984)『自己意識心理学への招待 人とその理論』(共著、有斐閣、1994)


内容紹介

悪魔憑き、癒しの聖者、愚者の祭、雇われ狂人・・・
精神医学と社会・文化史の観点から西洋中世の狂気の諸相を捉えた見事な成果!

本書は中世の精神疾病とその治療の実際を精神医学的に分析紹介もおこないつつ、著者の視野は広く人間活動の諸分野に及ぶ。狭義の「自然的狂気」にとどまらない、サタンと神の間に出現した狂気、悪魔憑き、異端や神秘的体験など〈聖なる狂気〉につらなる「超自然的狂気」のさまざまな局面を、幾多の詩編写本の図像表現や大聖堂建築の彫刻群、俗語文学など具体的な資料によってわれわれの眼前に展開する。精神医学の領域のみにとどまらない西洋中世世界の包括的理解への興味深い道筋を示している点で貴重な書物。図版多数。


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