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書名:戦間期日本の社会思想 「超国家」へのフロンティア
著者:福家崇洋 |
目次 |
序 章
一 いまなぜ戦間期か
二 断絶か連続か――研究史に触れて
三 「自己喪失」と「超国家」の狭間
四 本書の構成
第一章 「愛国」への普通選挙――雑誌『第三帝国』における普通選挙請願運動
一 「普く天下の同志に檄す」
二 鈴木正吾の「新愛国主義」
三 「純粋犠牲」としての普通選挙
四 自己に還れる生の叫び
第二章 普通選挙と人種改善――岡悌治の普通選挙運動に焦点をあてて
一 選挙権拡張団の提起
二 岡悌治の選挙権拡張論
三 純民会の結成
四 「団体」と「利他」競争
五 人種改善への途
六 文明化と人種改善
七 人種改善論と「民主々義」
第三章 国家への「解放」――第一次世界大戦期における北原龍雄の思想と運動
一 『新理想主義』への参加
二 「手」と「血」の普通選挙運動
三 請願への躊躇と運動の挫折
四 「第二維新」運動の提起
五 「自治思想」からの出発
六 社会主義者とともに
七 普通選挙同盟会の再興
八 普通選挙運動の頓挫
九 黒龍会との関係
一〇 売文社の営業主任
一一 国家社会主義運動の開始
第四章 老壮会の「共同」――大正デモクラシー期の改造団体連絡機関
一 老壮会とは何か
二 三五会と大日本社
三 黎明会への羨望
四 国家社会主義者の参加
五 文化学会と老壮会
六 労働問題への接近
七 労働者の「奇遇所」
八 角田清彦と『大眼目』
九 自由労働者組合と『自由労働者』
一〇 日本労働党の結成
一一 老壮会のその後
第五章 「ファシズム」の衝撃――一九二〇年代初期日本における
一 ローマ進軍以前
二 ファシズム「反動」論への異議
三 「反動」の多様化と「スピリツト」の有無
四 経綸学盟の結成
五 コミンテルン・ファシズム論の登場
六 「革命」としての「フアスチスチ」
第六章 「情意」と心理革命――高畠素之のイタリア・ファシズム論について
一 「大衆心理」への着目
二 ムッソリーニズムと国家社会主義
三 「情意」からの「国家メカニズム」批判
四 高畠素之・福士幸次郎論争(一)――「皇室中心主義」をめぐって
五 高畠素之・福士幸次郎論争(二)――「伝統」としての「万世一系主義」
六 「英雄崇拝と看板心理」
第七章 右派社会運動とクーデター未遂事件――国家社会主義運動と日本主義運動に焦点をあてて
一 日本主義運動の胎動
高須芳次郎と新東方協会/雑誌『祖国』と「日本主義」政党の出馬宣言
二 国家社会主義運動の再興
津久井龍雄と日本主義運動への傾斜/急進愛国労働者総連盟の結成と活動
三 愛国大衆党組織準備会の選挙戦
愛国大衆党組織準備会の結成/選挙戦出馬と党名変更の波紋
四 「三月事件」と全日本愛国者共同闘争協議会
全日本愛国者共同闘争協議会の結成と背景/前衛隊の結成と労働運動への進出/
「大衆動員」の挫折と対外硬運動への傾斜/日本国民党の呼応
五 「十月事件」の余波と新党樹立運動
『日本社会主義』の創刊/下中新党樹立の動き/日本国民社会党準備会の<MOR2 code=60a7,"" wid=108>藤
六 分岐する国家社会主義運動と日本主義運動
日本社会主義研究所の亀裂/大日本生産党結成と日本国民党の加入/大日本生産
党の選挙戦と敗北/合同から分裂へ――その後の国家社会主義運動
第八章 「現実的革命主義」への途――「ファシズム」と日本主義の狭間で
一 ナチ党台頭と国家社会主義運動
二 『Mein Kampf』邦訳と「国民社会主義」の理由
三 なぜ国家社会主義者はナチ党に共感したか
四 無産政党再編下の「反フアツシヨ」批判
五 ファシズム批判と「強制的」国家権力への警戒
第九章 国家社会主義・日本主義論争
――「社会心理」の行方と「天皇政治」をめぐって
一 国家社会主義批判の顕在化
二 「社会心理」への触手
三 「共同的精神」と「日本主義」の接合
四 小栗慶太郎・石川準十郎論争――「社会心理」抑圧からの解放
終 章
一 越境する「自我」の行方
二 「非合理」からの社会変革
三 「超国家」としての「ファシズム」論
四 「社会心理」をめぐる攻防――人の心は国家を超えうるか
資 料 編
北原龍雄関係資料
老壮会関係資料
権藤誠子関係資料
山元亀次郎関係資料
国家社会主義運動関係資料
山内一男(別府峻介)関係資料
末中勘三郎氏聞きとり
平野力三裁判資料
あとがき
年表
人名索引
著者紹介 |
福家崇洋(ふけ・たかひろ)
1977年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(人間・環境学)。京都市市政史編さん助手をへて,現在京都外国語大学非常勤講師,京都市上下水道局嘱託研究員。
専攻 日本近代思想史。
主要論文 「1930年代初期日本における国家社会主義運動――そのナチ党論と「ファシズム」論に焦点あてて」(『史学雑誌』第118編第8号,2009年),「1930年代初期日本における国家社会主義・日本主義論争――「社会心理」の行方と「天皇政治」をめぐって」(『キリスト教社会問題研究』第57号,2008年)など。
内容紹介 |
大正デモクラシーから総力戦体制へ
日本版反ファッショ統一戦線の可能性をさぐる
大正デモクラシー下の普通選挙運動がファシズム的要素と結びつく可能性を明らかにするとともに、これまでファシズムと同一視されてきた日本の国家社会主義運動の軌跡の中に、個人が国家に埋没しない、近代国家をこえる新たな共同性への契機を掘り起こす。