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書名:ポスト・ユートピアの人類学 編者:石塚道子、田沼幸子、冨山一郎 定価:3780円
(本体価格3600円+税180円) |
目次 |
はじまり 田沼幸子
T 「私たち」を求めて
ユートピアの重さ、ポスト・ユートピアの心地よさ 春日直樹/教育に託した開発・発展への夢――内戦、離散とスーダンのパリ人 栗本英世/地に呪われたる者は起ち上がったのか――マルティニクの植民地解放プロジェクト 石塚道子
U 夢は「回帰」するのか
動員と連帯の跡地にて――自主管理時代のベトナム村落における統治のモラルの語りかた 加藤敦典/市民社会を生きる人びと――フランス・マグレブ系
移民の場合 植村清加/センセーショナリズムへの冷笑――移行の言説としての韓国「民主化」と元労働運動家の懐古 太田心平/ナショナリズムの歌い方――マレーシアの愛国歌(lagu
patriotik) の時間 上田 達
V いま、ここにない希望
夢と憫察――中国革命のなかの「新女性」 佐々木一惠/YUMA-CUBA ここではないどこか、私ではない誰か 田沼幸子/「革命芸術」の齟齬――ニカラグア壁画運動のたどった途(みち) 佐々木祐/ずれた未来を垣間見る――フランスにおける「組み込み」
政策の周辺で 中川 理
W かえりみれば
〈アイロニー〉の翻訳――ポスト・ユートピアが人類学に教えること 大杉高司/ユートピアたち――具体に差し戻すということ
冨山一郎
執筆者紹介
編者・内容紹介 |
石塚道子 いしづか みちこ
1946年生まれ。関西学院大学大学院博士課程修了。博士(地理学)。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。カリブ海地域研究・文化地理学専攻。カリブ海地域小アンティール諸島を中心にクレオール社会・文化空間研究を行っている。『カリブ海世界』(編著,世界思想社,1991年),『
〈複数文化〉のために』(共著,人文書院,1998年),『植民地主義と人類学』(関西学院大学出版会,2002年),『国際移動と連鎖するジェンダー――越境する主体/変容するアジア』(共著,作品社,2008年)など。
田沼幸子 たぬま さちこ
1972年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。文化人類学。大阪大学大学院グローバルCOE特任研究員。「ユートピア小説と民族誌――人類学
における抵抗論と反=抵抗論を越えて』(『大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」研究報告書2004−2006』第2巻,2007年),『ポスト・ユートピアのキューバ――非常な日常の民族誌』(博士論文,2007年),Post−Utopian
Irony :Cuban Narratives during the “Special Period” Decade (PoLAR 30
(1),2007)など。
冨山一郎 とみやま いちろう
1957年生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。大阪大学大学院文学研究科准教授。歴史学,文化研究。『近代日本社会と「沖縄人」――「日本人」になるということ』(日本経済評論社,
1990年),『暴力の予感――伊波普猷における危機の問題(岩波書店, 2002年),Okinawan
Diaspora (共著,University of Hawai‘i Press, 2002),Deconstructing Nationality
(共著, Cornell University,
2005),『増補 戦場の記憶』(日本経済評論社, 2006年),『記憶が語りはじめる』(編著,東京大学出版会, 2006年)など。
夢の「あと」を生きる
革命・解放・平和・文明・開発・富――人類の理想郷としてのユートピアをめざすことができるという物語が説得力を失った今もなお、ユートピア的な希望を捨て去ることなく生きる人びとや運動に、人類学者として向き合う。失望や幻滅、皮肉をもって論じるのではなく、複雑で割り切れない現実の人間に肉薄することで「ユートピア」の現実批判力を探る新しい試み。