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書名:亡霊としての歴史 ―痕跡と驚きから文化人類学を考える― 著者:太田好信 定価:2520円
(本体価格2400円+税120円) |
目次 |
序章 亡霊と痕跡、そして驚き――「憑在論」から見える世界
第一章 終結を拒む先住民たちの歴史――「返還」と媒介としての人類学的実践
第二章 通過中の民族誌――社会過程としての「民族誌を書くこと(エスノグラフィック・ライティング)」
第三章 歴史の中のミメシス――ディラン/グアテマラ/九・一一以降の世界
第四章 グアテマラ・マヤ系先住民と言語権――征服が痕跡として残る社会における「権利」をどう捉えるか
第五章 文化の所有と流用――亡霊と痕跡が支配する時間からの試論
第六章 録音技術と民族誌記述――近代のエートスとしての保存文化
第七章 ネオリベラリズムが呼び起こす「人種の亡霊」――グアテマラの未来に残るテロルの痕跡
第八章 ルース・ベネディクトと文化人類学のアイデンティティ――『菊と刀』から『文化のパターン』へと遡行する読解の試み
付録1 人類学をつくり直す――『芸術人類学』について
付録2 文化人類学の魂を探す――私的「リーディング・リスト」
注/あとがき/引用文献/事項索引/人名索引
訳者・内容紹介 |
人類学再想像とその未来に向けた真摯な思考
人類学再想像は著者年来の主張であるが、標題にはっきりと表れているように、今回はベンヤミン−タウシグ流の「アナクロニズム」的思考が理論的準拠点とされる。一例を挙げれば、ベンヤミンの「翻訳者の使命」中の有名な文句――「翻訳者の使命とは、異質な言語の内部に呪縛されているあの純粋言語をみずからの言語のなかで救済すること、作品のなかに囚われているものを改作のなかで解放すること」――を援用し、すでに了解済みとされ、顧みられなくなっているテクストに、ふたたび生命を見出す作業が繰り広げられる、例えばベネディクトの『菊と刀』やマリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』の現代的可能性がスリリングに説かれることになる。付録として「人類学の必読書リスト」を付す。
太田好信 おおた よしのぶ
1954年生まれ。九州大学大学院教授。文化人類学。著書に『民族誌的近代への介入』(人文書院、2001年)『人類学と脱植民地化』(岩波書店、2003)。