書名:
哲学の誕生
      男性性と女性性の心理学

著者:湯浅 泰雄

定価:4200円 (本体価格4000円+税200円)
サイズ:A5判上製 436
ページ 刊行日2004年7月 
ISBN4-409-04068-5 (教養/哲学・ユング思想)

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目次
はじめに

序論 人間存在の自己矛盾
自然内存在と自然外存在:身体と人間性の自己矛盾  性と食  エロスとタナトス/性は倫理と信仰に関係する:モラル の感覚と裸体性  裸体性における名誉と恥  人格の尊厳さの根拠  魂の根拠とリピドの問題/思想なき現代に何を問うべきか:科学が失われた時代  現代の病としての不安  科学方法論における時間と空間の統合  なぜギリシアなのか/研究の課題と方法:神話から宗教と哲学への移行過程  心をどう定義するか  霊性(スピリチュアリティ)概念について  

第一章 古代における哲学と心理学
心理学的観点:エロスはなぜ哲学から消えたのか?  神託と予言の心理学  神話と民衆宗教  肉体と知性の一体的昂揚  アスクレピオスの神殿医療/古代哲学と西洋思想の伝統:哲学の始まりはタレスかソクラテスか  ギリシア哲学とキリスト教の関係を考える  東西思想の比較問題/神話は宗教と哲学分かれる:古代哲学史とソクラテス  ギリシア文明の特徴  神話研究の心理的意義  再びエロスと哲学について

第二章 意識の発達史
神話世界の激情:ギリシア史の非連続性  暗黒時代に何が起こったのか  女たちの運命  神々のパトス  英雄神話における男性性と女性性の統合  太古の母神  恥の感覚の根底  「影」の奥なる秩序  ゼウス宗教の本質/人格の形成史:女神の怒り  闇を迷う魂  英雄は女 性に苦しめられる  アニマの諸相  悲劇における倫理的意識  アポロンの神託と女性性/男性性の確立:プラトンの政治批判と倫理の問題  性の国家管理  アテナイにおける性の 氾濫  少年愛  戦友の心と心は――  ソクラテスの若者教育  ソクラテスの女性観  女性性は底流化する  神的狂気とイデア界  国家におけるロゴス

第三章 哲学誕生
運命からの救済:救済神を待望する  ポリスの発達と哲学誕生の背景  新時代の精神的指導者  神話を否定することの意味  ソフィストの登場/東西の古代におけるイメージ思考:四つのアルケーと人間の魂  古代インドのイメージ思考との比較  究極の元素は考えられるのか  中国の気の自然観  形而上学とメタフィジクの違い  世界外存在と世界内存在/論理と存在:あるものとあること  世界が「ある」ことを知るとは?  永遠なものと変化するもの  倫理学と自然学のゆくえ

第四章 理性と霊性
平和、戦争、哲学:ポリスの歴史と言論の発達  戦争と神託  アテナイの民主政治  ソクラテス時代のアテナイ  一国主義の問題点  予期しない開戦  ボテイダイアの祈り  開戦前後の状況  ペリクレス失脚運動  疫病とアポロンの神託  戦争の長期化と国論の分裂  敗戦をめぐる心理状況  戦争と政治に対して何を語るべきか/政治と倫理:ソクラテス問題  人の師となること  ソクラテスの皮肉  民主主義と徳の教師  言論の力と人間の心理  政治学と倫理学の対決  快楽と人間の徳性  理性と法  徳は教えられるか  学道の人は貧なるべし/ソクラテス裁判:ダイモンの声  何のための告発か?  神と自己の関係  デルポイ神託の解釈  魂につい何を語り得るか  高言に埋もれた真実  死を越えるもの  ソクラテスからプラトン、アリストテレスへ

第五章  男性性の帝国
ローマ思想史の問題点:キリスト教はどうしてローマを支配したのか  ローマの思想史を見る視点  なぜ倫理学はローマで栄えたのか  ローマの歴史と人間像  ローマの宗教事情とアジア的寛容  ユダヤ教の唯一絶対の神  ローマ史におけるユダヤ教  信仰と政治/ストアの倫理と身体論:武人の倫理意識  ストア学派の身体観  中国の気とストアのロゴスを比較する  自然に従って生きる――物理と倫理は一体である  マルクス・アウレリウスの世界/内乱の時代の社会心理:迫害はどのようにして始まったか  迫害をめぐる社会心理  殉教をめぐる集団心理

第六章 神の女性性
キリスト教と禁欲主義の倫理:民衆の無学と「迷信」  禁欲主義への情熱と性の難問  修道院運動について/文明の進歩とモラルの荒廃:上流社会における家族の崩壊  豊かさは倫理的特性を低下させる  新宗教の発展と宮廷の乱脈  聖母受胎の伝承と神の女性性/人間性と神性:三位一体論をめぐって  聖母信仰の歴史心理学  瞑想とイメージ体験  グノーシスの人間観と仏身論  グノ ーシス教の女性重視  グノーシス教と古代錬金術  聖霊の心理学  再び信仰と政治について/奇跡論の周辺:イエスの癒しのわざについて  パウロの回心について  ステバノの殉教をめぐって  十字架と背教者  古代宇宙論の性格

終章 霊性の問題のゆくえ
人格の形成について  男性性と女性性の統合  真の自己を求める人間愛  結び――現代の危機と将来

参考文献および注/あとがき/索引(人名・神名/地名/書名)


著者・内容紹介

湯浅泰雄 ゆあさ やすお
1925年生まれ。東京大学文学部。文学博士。山科大学、大阪大学、筑波大学、桜美林大学の教授を経て、退官。桜美林大学名誉教授。専門、関心分野は日本思想、倫理学、心理学、身体論、宗教と科学。今後の仕事の方向として、倫理と信仰の心理学的研究、科学方法論、気と東洋医学などの分野。
主著:『身体論――東洋的心身論と現代』(講談社学術文庫)、『気・修行・身体』(平河出版)(以上2点はニューヨーク州立大学出版局より英訳刊行)、『ユングとキリスト教』(人文書院、のち講談社学術文庫)、『ユングとヨーロッパ精神』『ユングと東洋』『共時性の宇宙観』(以上、人文書院)、『身体の宇宙性』『宗教経験と身体』(以上、岩波書店)、『和辻哲郎』(ちくま学芸文庫)、 『スピリチュアリティの現在』(監修、人文書院)ほか、『湯浅泰雄全集』(全18巻、白亜書房)刊行中


いったい自分は何を信じ、そしていかに人生を生きてゆくべきか。こころの深みにある魂からの問いかけ。倫理と信仰の意識への初めての心理学的アプローチ、著者畢生の大作!

古代ギリシアにのみみられる神話から哲学への発展、ギリシアにおいて哲学はなぜ初めて誕生し得たのか。神話世界に位置をしめる女性性の重要性に着目したユングの視点を発展的にとらえ、男性性と女性性の統合を通してこそ真の自己を知ることができるという確信から、西洋における信仰と倫理の伝統の出発点を探り、東洋の伝統との共通点と相違点を見事にえぐり出す。


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