はじめに 序論 人間存在の自己矛盾
自然内存在と自然外存在:身体と人間性の自己矛盾 性と食 エロスとタナトス/性は倫理と信仰に関係する:モラル
の感覚と裸体性 裸体性における名誉と恥 人格の尊厳さの根拠 魂の根拠とリピドの問題/思想なき現代に何を問うべきか:科学が失われた時代 現代の病としての不安 科学方法論における時間と空間の統合 なぜギリシアなのか/研究の課題と方法:神話から宗教と哲学への移行過程 心をどう定義するか 霊性(スピリチュアリティ)概念について
第一章 古代における哲学と心理学
心理学的観点:エロスはなぜ哲学から消えたのか? 神託と予言の心理学 神話と民衆宗教 肉体と知性の一体的昂揚 アスクレピオスの神殿医療/古代哲学と西洋思想の伝統:哲学の始まりはタレスかソクラテスか ギリシア哲学とキリスト教の関係を考える 東西思想の比較問題/神話は宗教と哲学分かれる:古代哲学史とソクラテス ギリシア文明の特徴 神話研究の心理的意義 再びエロスと哲学について
第二章 意識の発達史
神話世界の激情:ギリシア史の非連続性 暗黒時代に何が起こったのか 女たちの運命 神々のパトス 英雄神話における男性性と女性性の統合 太古の母神 恥の感覚の根底 「影」の奥なる秩序 ゼウス宗教の本質/人格の形成史:女神の怒り 闇を迷う魂 英雄は女
性に苦しめられる アニマの諸相 悲劇における倫理的意識 アポロンの神託と女性性/男性性の確立:プラトンの政治批判と倫理の問題 性の国家管理 アテナイにおける性の
氾濫 少年愛 戦友の心と心は―― ソクラテスの若者教育 ソクラテスの女性観 女性性は底流化する 神的狂気とイデア界 国家におけるロゴス
第三章 哲学誕生
運命からの救済:救済神を待望する ポリスの発達と哲学誕生の背景 新時代の精神的指導者 神話を否定することの意味 ソフィストの登場/東西の古代におけるイメージ思考:四つのアルケーと人間の魂 古代インドのイメージ思考との比較 究極の元素は考えられるのか 中国の気の自然観 形而上学とメタフィジクの違い 世界外存在と世界内存在/論理と存在:あるものとあること 世界が「ある」ことを知るとは? 永遠なものと変化するもの 倫理学と自然学のゆくえ
第四章 理性と霊性
平和、戦争、哲学:ポリスの歴史と言論の発達 戦争と神託 アテナイの民主政治 ソクラテス時代のアテナイ 一国主義の問題点 予期しない開戦 ボテイダイアの祈り 開戦前後の状況 ペリクレス失脚運動 疫病とアポロンの神託 戦争の長期化と国論の分裂 敗戦をめぐる心理状況 戦争と政治に対して何を語るべきか/政治と倫理:ソクラテス問題 人の師となること ソクラテスの皮肉 民主主義と徳の教師 言論の力と人間の心理 政治学と倫理学の対決 快楽と人間の徳性 理性と法 徳は教えられるか 学道の人は貧なるべし/ソクラテス裁判:ダイモンの声 何のための告発か? 神と自己の関係 デルポイ神託の解釈 魂につい何を語り得るか 高言に埋もれた真実 死を越えるもの ソクラテスからプラトン、アリストテレスへ
第五章 男性性の帝国
ローマ思想史の問題点:キリスト教はどうしてローマを支配したのか ローマの思想史を見る視点 なぜ倫理学はローマで栄えたのか ローマの歴史と人間像 ローマの宗教事情とアジア的寛容 ユダヤ教の唯一絶対の神 ローマ史におけるユダヤ教 信仰と政治/ストアの倫理と身体論:武人の倫理意識 ストア学派の身体観 中国の気とストアのロゴスを比較する 自然に従って生きる――物理と倫理は一体である マルクス・アウレリウスの世界/内乱の時代の社会心理:迫害はどのようにして始まったか 迫害をめぐる社会心理 殉教をめぐる集団心理
第六章 神の女性性
キリスト教と禁欲主義の倫理:民衆の無学と「迷信」 禁欲主義への情熱と性の難問 修道院運動について/文明の進歩とモラルの荒廃:上流社会における家族の崩壊 豊かさは倫理的特性を低下させる 新宗教の発展と宮廷の乱脈 聖母受胎の伝承と神の女性性/人間性と神性:三位一体論をめぐって 聖母信仰の歴史心理学 瞑想とイメージ体験 グノーシスの人間観と仏身論 グノ
ーシス教の女性重視 グノーシス教と古代錬金術 聖霊の心理学 再び信仰と政治について/奇跡論の周辺:イエスの癒しのわざについて パウロの回心について ステバノの殉教をめぐって 十字架と背教者 古代宇宙論の性格
終章 霊性の問題のゆくえ
人格の形成について 男性性と女性性の統合 真の自己を求める人間愛 結び――現代の危機と将来
参考文献および注/あとがき/索引(人名・神名/地名/書名) |