書名:反・キリスト――黙示録の時代 著者:E・ルナン 訳者:忽那錦吾 定価:2520円
(本体価格2400円+税120円) |
目次 |
まえがき(抄)
第一章 ローマにおける囚人パウロ:ネロ登場のローマ ポンポニア・グラエキナ 獄中から伝道する ローマの教会 ユダヤ・キリスト教徒たちの横車 夢を実現したパウロ フィリピへの手紙、/第二章 ローマにおけるペテロ:パウロとペテロの協調 “世紀の至福”にケチを付けるのか 迫害の幕開け お上に逆らわぬ主義 なぜキリスト教徒が?/第三章 ユダヤの教会、ヤコブの死:ヤコブの手紙 タルムードに描かれた聖職者の堕落 貧は聖の同意語 罪の告白 イエス伝説に加えられた冥府の期間 イエルサレム教会による布教 暗雲たちこめるオリエント 虐殺されたヤコブ 不気味な兆候/第四章 パウロ最後の活動:ロゴスの理念の芽生え パウロ思想の偏移 パウロ最後期の思想のレジュメ イエスの抽象化 イエスの神性を認める コロサイの町、グノーシス派の開花 エフェソの信徒への手紙について イエスの勝利はパウロの死 書簡文学の傑作『フィレモンへの手紙』 弟子に去られる 懐疑を知らないパウロはもっと遠くへ/第五章 迫りくる危機:静かな嵐の前 感動的なペテロの手紙/第六章 ローマの大火:ロマンティストに毒されたネロ 観客殺しもやる大根役者 大衆は見世物に夢中 ポッペア ネロを弁護すれば “宇宙の祭典”に一役 ローマの放火犯/第七章 ネロの美学――クリスチャンを殺せ:ユダヤ人の憎しみが影に? 処刑を哄笑し拍手して見物する庶民 殉教者の美を発見 信仰のために受けた苦しみの快感 はからずも美の創始者となる/第八章 ペテロとパウロの死:ある憶測だが/第九章 危機の直後:エフェソに脱出 エフェソでの内紛とバルナバ 『ヘブライ人への手紙』の内容 福音書から逸脱する神学/第十章 ユダヤにおける革命:神に病む民族の痙攣 ユダヤ人迫害の元には ジュダイズムが越えられない溝 “ここから出よう!”の声 対ローマ臨戦態勢 緒戦、ローマ軍の敗退/第十一章 シリア、エジプトにおける虐殺:ユダヤ人に対する反感の豊かな実り ユダヤ人たちが残虐な報復に出る 両極端を併せ持つユダヤ民族 奪還作戦始まる 失敗/第十二章 ガリラヤにおけるヴェスパシアヌス――恐怖のイエルサレム、キリスト教徒の脱出:戦争の前夜 高配したイエスの出生地 革命軍とごろつきの支配 “イエスは仇を打ってもらった” 熱心党のテロ/第十三章 ネロの死:ネロに火急の知らせ 軍の離反 着の身着のままの脱出 ネロの文学的倒錯 /第十四章 災いと前兆:恐怖を来す 異常な現象の多発 キリスト教狂詩曲 イタリアの天変地異の続出 小アジアの激震/第十五章 アジアの使徒:ヒエラポリスのキリスト教徒 エフェソとメアンダー川の谷間 ファナティスムの両面 ユダヤ側の反撃が始まる 贋ネロ 黙示録の意識と形式 賢者ヨハネとは何者か パトモス島との関係 病的なパレットの絵の具/第十六章 黙示録(アポカリプス):天国のイエスの姿 七つの封印を破っていくと 七つのトランペット 間奏 最後のトランペット 反ローマ権力 第二の獣とは誰か 挿話 最後の七つの災い ローマをやり玉にあげる 謎解き “バビロンは倒れた” 口から剣を突き出したキリスト 千年王国の到来とその後 最後の審判/第十七章 著書評価の推移:黙示録の人気の推移 鬼才の模倣画 来世、至福千年思想の発生 ペルシャから伝わった 子供っぽく、悪趣味 黙示録は危険な書物だ 暗いアンティテーゼ 科学の将来、永遠のハレルヤを歌うとき/第十八章 フラヴィウス家の即位:オトーの政治 毒をもって毒を制するつもりが ヴェスパシアヌス、ティトスの動静 権力者に取り入るユダヤ人 ローマ崩壊の夢は消えた 骨肉あい食む抗争/第十九章 イエルサレム瓦解:戦闘開始 ヨセフスの所説 神殿の炎上 袋のねずみ/第二十章 イエルサレム壊滅の結果:史家ヨセフスのおぞましさ 華々しい凱旋式 理性とローマ法の勝利 ペテンは古代で必要だった 残党狩り、マサダの悲劇 ジュダイズムの行く末 普遍文化に寄与した? ジュダイズムと神殿喪失 カトリック主義の改革
訳者ノート
著者・内容紹介 |
忽那錦吾 こつな きんご
1932年生。神戸大学経営学部中退。仏国郵船会社、川崎重工をへて鞄仏技術と画商を経営。
編訳:『フランスを創った人びと』(ラジオ・フランス)、『大乗と小乗の世界』(永井財団)を編集、『船荷証券論』(P・ウエルディエ著、陽報出版)
、『イエスの生涯』 『パウロ』(E・ルナン著、人文書院)を翻訳。
ローマ、ユダヤ、キリスト教。壮絶なる戦いと、新たなる時代の幕開け。
『イエスの生涯』『聖パウロ』に続く、ルナンの大著『キリスト教起源の歴史』第4部。西暦61年〜73年を描く。皇帝ネロの狂気、ユダヤ教徒の内紛、キリスト教の迫害、ローマ帝国とのユダヤ戦争、エルサレムの陥落、そして黙示録の成立。壮絶を極めた時代を生き生きと描写する。「キリスト教が歩んだ全発展の道で、本書が扱った時期はかつて例のない異常な時期であった。…立ちはだかる目の前の怪物、悪の権化、これに対峙する善の権化すなわちイエス。…キリスト教は…ローマに制圧されたジュダイズムの枠を越えて、ますます自由に羽ばたき、独自の運命を辿っていく…。」(序文より)