書名:武士道の考察 著者:中本征利 定価:2625円
(本体価格2500円+税125円) |
目次 |
まえがき
第一章 海行かば――戦士の美意識:氏と大王/中央集権国家へ/伴と舎人/軍団と健児/万葉の戦士/軍事氏族大伴氏/衰退する名門/家持は陰謀家?/大伴一族には同性への恋情を歌った歌が非常に多い/戦士と同性愛
第二章 草燃ゆる――武士の登場:武士とは?/技能/所有/衆議/契約/忠誠と反逆/戦士は平等 エロスとしての忠誠心/律令制/土地はすべてお上のもの?/田堵名主/墾田そして荘園/半合法的土地占有者 武装する開発領主 そして武士/蝦夷人との戦闘/騎射戦術/騎馬と封建制/武装の変化/都の武者/群盗蜂起/兵、平将門/将門の乱は内戦/貴族の傭兵/内廷政治/矛盾の激化/清和現時と摂関家/伊勢平氏と院政/武士の棟梁/僧兵対策/院政の矛盾 源平の内乱/ボディガード/武士の暴力 義家と貞盛/武技/源宛と平良文/余五将軍平維茂/屠膾の輩・殺人の上手/六条顕季と源義光/武士は魔よけ/契約 団体の形成/命令に背けば/現地では裕福でも/武士の官位/アウトロー/契約・団結・家職・名誉/妹尾兼康
第三章 いざ鎌倉――身分の成立:平氏政権/鎌倉幕府/守護地頭/承久の乱/貞永式目/御恩と奉公/評定衆 衆議の制度化/征夷大将軍/将軍職は借物 衆議による支持/テクノクラート、中間管理職としての武士階級/地頭の非法/貨幣経済と悪党/戦術の変化/得宗専制/武士創の拡大/衆議と反乱/一所懸命@ 蘇我兄弟/一所懸命A 竹崎季長/尼将軍の演説/いざ鎌倉/青砥藤綱 鎌倉武士の合理性
第四章 明日は明日の風が吹く――叛覆常なし、流動する階層:室町幕府 守護連合政権/守護大名と戦国大名/郷村、座、一揆/名主と作人/国人・豪族/農村は武力の培養地/商人職人は座に結集/酒屋土倉/寺院は銀行/再び悪党論/足軽/楠正成/高師直/亮度する階層 下克上/将軍守護家の没落/国人領主から戦国大名へ/兵農分離/一円支配/家臣団の統制/足軽部隊/ 戦国家法/戦闘の変化 ルール無視の源平合戦/南北朝の内戦 歩兵の活躍/応仁の乱 足軽の登場/鉄砲伝来 戦闘は歩兵中心に/黄金の島ジパング/兵庫北積と草戸千軒/生活文化の享受/一揆、一揆、一揆/婆沙羅大名佐々木道誉/教養があるのが良いか悪いか/乱世の奸雄/七回主君を替えないと/死ぬべき時には死ぬ/がめつい武士達/武士と郷村/毛利家では/徳川家では/多胡辰敬教訓状 戦国の家訓/命捧げます・命頂きます 集団による死の保障
第五章 仏と侍――戦闘そして経済:仏教伝来/縁起無我/般若空と菩薩道/大乗仏教/国家と仏教/仏教の非国教性/ひじりとさむらい 聖俗の共存/寺院領主/僧兵/菩薩僧行基、私有地開拓者/サンガと武士団/武士と僧侶 死に直面せざるをえない者/武士+僧侶=菩薩/奈良平安仏教から鎌倉仏教へ/親鸞/日蓮/親鸞と日蓮 生きる現実の肯定/法華一揆と一向一揆/武士道菩薩道論
第六章 武士は食わねど――戦士そして治者:鉢植の大名/武士はサラリーマン/幕政初期の公共投資/大名財政の破綻 商人の台頭/武士は経済官僚に/五代綱吉の財政改革 勝手方老中と勘定吟味役の設置/元禄時代 豊かな消費生活/貨幣改鋳、是か非か?/享保の改革 米相場の統制と金本位政策/公事方お定書 民事法制定へ/田沼息次 商人資本との連携/寛政の改革 社会福祉政策への着手/幕府を潰した十一代家斉/天保の改革 上地令/経済政策打つ手無し/庄屋仕立ての幕政/評定会議/近習出頭人/側用人・側衆/足高制/封建制と地方自治/藩政改革と下級武士の台頭/緩慢な下克上/なぜ衆議制? 死を共有する点において武士は平等/歌舞伎者 男道/念者 同性愛/青少年教育機関としての同性団体/殉死 主君は恋人/切腹 忠誠と反逆/心中/死・男道・連帯/戦士か治者か
第七草 武士も食わねば――治者そして戦士:儒教、漢民族の風習儀礼/孔孟の教え そして長い停滞/宋学、朱子、五倫五常/無内容な宋学/死を見つめない儒教/固定装置としての儒教/士道、素行と常朝と友山/山本常朝 葉隠武士道/大道寺友山/儒学の枠を破った人達/荻生狙彿/本居宣長/水戸学/石田梅岩/二宮専徳/村の自治/衆議制 武家/衆議制 農民/似ている武家と農村/幕政の限界/やせがまん/武士道の成立
第八章 討ちてしやまん――革命:黒船来航と世界情勢/市民革命/工業軍事技術の変革期/幕藩体制の行き詰まり/無策ではなかった幕府/開国か杏か? 処士横議/安政の大獄/公武合体路線/なぜ長州は壊夷倒幕か?/外国との戦闘 開国へ 薩長岡盟/大政奉還倒幕/江戸進駐 東京遷都/有司専制/廃藩置県/秩禄処分/地租改正/流通経済の承認/壊夷ほ誰がするのか? 俺達だ 草莽の処士/戦う、すべてはそれから、変身せよ/政府、民権派、叛乱士族/西郷隆盛と西南戦争/人望家西郷/凄腕のワル、リアリスト西郷/城山/武士の自己否定
第九章 山行かば――武士と天皇:なぜ変革は成功したのか?/天皇不執政/幕府 委任された実務/天皇と武家の軋轢/徳川幕府と天皇/天皇と武家/生活者としての天皇/文化の保持者としての天皇 伝統と美意識/君主は恋人/呪としての天皇
第十章 友は恋人――社会的衝動としての同性愛:万葉集と同性愛/指導者、忠誠と恋慕の対象/武家と僧侶/武士道・男道/同性愛 生殖による関係の止揚/死は生の凝縮/同性愛 死の容認 社会的衝動/若者組・若衆組/社会的衝動としての同姓愛
第十一章 われときみ――思想としての武士道
参考文献/索引
著者・内容紹介 |
中本征利 なかもと まさとし
1942年神戸市に生まれる。1966年京都大学医学部卒業。1976年大阪近郊尼崎にて精神分析クリニックを開業し今日に至る。その間豊岡病院・三国ヶ丘病院・北野病院神経精神科(副部長)に勤務。山村道雄氏に教育分析を受ける。1985年より1995年まで大阪精神分析ゼミナールを主催し後進の指導に当たる。現在治療分析の傍ら教育分析及び個人指導によるスーパーヴィジョンも行う。大阪市立大学非常勤講師。
主著:『存在と性』(1984)、『フロイトとヘーゲル』(1985)、『何のために心理療法を学ぶのか』(1986)、『抑圧の構造』(1987)、『任侠のエトス』(1987、以上勁草出版サーヴィスセンター)、『精神分析技法論』(ミネルヴァ書房、1995)、『男の恋の分析学』(2001)、『源氏物語の精神分析学』(2002)、『精神分析療法における攻撃性の研究』(2002、以上蝸牛新社)、『恋愛力』(集英社、2003)
、『日蓮と親鸞』(人文書院、2004)
共著:『寂しい女』(人文書院、1991、品切)、『心理臨床大辞典』(培風館、1992)、『カウンセリングの理論と技法』(1994)、『カウンセリング事例集』(1994)、『発達とカウンセリング』(1994、以上別冊発達、ミネルヴァ書房)、『転移/逆転移』(1997、品切)、『共感と解釈』(1999、以上人文書院)
武士道は、思想倫理である以上に、制度であり文化であった
著者によると、日本の社会は、天皇制、仏教、そして武士道の三つが相互に補完しあいながら形成されてきたという。武士道は、思想倫理であるだけではなく、それ以上に制度そのものであり文化である。武士道が複合的な形成物であるなら、武士道の担い手である武士の社会形態と内面的感情の考察は必須といえる。精神科医である著者が、平将門から西郷隆盛にいたるまでの1000年間の政治・経済・文化を丹念に見直し、武士の生き様、生活様式、同性愛感情もふまえた武士の情念を語り、武士道の意味するところを絶妙な語り口で述べる。